第51話 戦力増強
源氏さんのお店に入って早々妹が元気よく挨拶すると、早速店の奥からいくつかのモノを持ってきてくれた。
「まず、小僧にはこれだな」
僕としては盾を予想していたのに、源氏さんが出してくれた盾というのはあまりにも小さい。形状は腕輪になっていて、小さな鍋蓋サイズの黒い盾っぽいものが付いているだけだ。
「こちらは最後の黒龍素材で作った盾だ。腕に付けて見ろ」
源氏さんの指示に従って腕輪部分に左腕を通す。腕輪部分は手首より少し奥に進んだ場所でピッタリと合った。
「それは黒龍の逆鱗と呼ばれている部分で作った品だから、その盾部分が丸々逆鱗になっている」
「確かに絵本とかで見た竜の鱗みたいな形ですね?」
三角の形で下を中心に広がっていて三つの山なりになる絵にかいたようなドラゴンの鱗って感じだ。
「大きさは小さいが盾としての性能は断トツの性能だ。信じて使ってみろ。特に魔法に対してな」
「もちろんです! 源氏さんが作ってくださったモノを疑うなんて思ってません! ありがとうございます!」
「では次だ」
「「「次?」」」
まさか次と言われると思わず、凪と六花と声がかぶる。
今度源氏さんが取り出したのは――――――杖が二つ。
見た目は魔法使いの杖なのは分かるんだけど、僕が今まで見て来た魔法使いの杖と圧倒的に違うのは、まさかの大きさだ。
うちのパーティーでも杖を使っている絵里さんは、普段から全長一メートルくらいの杖を使っている。それに対して、目の前に置かれた二つの杖はどちらも三十センチくらいと子供のおもちゃのような小ささだ。
「まずこっちはの赤い宝石が入っているのは、そちらの嬢ちゃんの分だ」
「えっ!? 私?」
驚いて自分を指差す絵里さんの前に杖を渡す。
「たまたまレッドアイルビーが入ったからな。魔法使いには持って来いの素材だ。火力には気を付けな」
「あ、ありがとう! マスター!」
「おうよ。次は小娘だな」
「私もくれるの~?」
「くれるじゃねぇ! ツケだって言ってるだろ。ほら、小娘のはこっちだ」
六花に渡してくれた杖も大きさは短いのだが、絵里さんの宝石が赤なのに対して、六花の杖には白い宝石が嵌められている。
「そもそも小僧は自分の妹に武器すら持たせないみたいだからな」
「!?」
源氏さんにそう言われると、今まで何も持たずに魔法を連発している妹がデフォルトになって、武器を持ってもらう発想に至らなかった。
「り、六花。ごめんな……なんかいつも杖なしだ普通になってしまって」
「ううん! 正直に言うと、絵里姉のような長い杖は持ちたくなかったの! だから私からもずっと言わなかったし、凪姉にもそう言った」
凪に視線を移すと、首を縦に振った。
ひとまず、六花に悲しい想いをさせなくてよかった。
「だが上層に行けば行くほど魔物も強くなる。小娘も武器くらい持っておくといい」
「ありがとう~マスター! 大事に使うね?」
「あたりめぇだ。俺様の武器を大事に使わねぇやつは、今度ゲンコツだからな」
源氏さんの分厚い腕で殴られたら、タダじゃ済まなさそうだ。僕もちゃんと剣の手入れとかしなくちゃな。
「次は青いのだな」
「花音もあるんですか~? やった~!」
意気揚々と前に出てカウンターに肘を乗せて楽しそうに源氏さんを待つ。
源氏さんが持って来たのは、片手に収まる大きさのまん丸いボールだった。ただ、形からボールとかではなくて、どちらかと言えば機械っぽい?
「これってもしかして!」
「おうよ。『スカウター』だ」
「わあ~! こんな凄いのもらってもいいの!?」
「青いのなら使いこなせるんじゃねぇか? 俺様が作ったものではないが、知り合いが余ったから捨てようとしたやつを持って来たんだ」
「え~! スカウターを捨てるなんてもったいないよ! これも栞人さんにツケておいて~!」
「おうよ!」
あはは……やっぱりそうなるか。
スカウターというものを受け取った花音は真っ先に僕にやってきた。
「栞人さん。魔石一つください!」
「魔石? いいけど……はいよ」
何故か魔石を求められたので出してあげると、受け取った魔石をスカウターと呼ばれたモノに当てた。
すると魔石の光がスカウターにどんどん吸収されていき、やがて姿を消した。
魔石を全て吸収したスカウターは、びくびくと動くと、丸いボールから形を変えて鳥に近い姿に変形した。
「おお! 元々こういう使い方なんだな。ということは魔石はエネルギー補給か?」
「その通りです。スカウターは色々便利なので、ここで手に入れたのはとても良かったです~それに栞人さんがいればエネルギーも問題ありませんし~」
「そうだな。魔石ならいくらでも補充できるからな。名前は付けるのか?」
「う~ん。鳥だから……トリー? でもあまり変化がないですね。リトーにします!」
「そうか。よろしくな。リトー」
機械音で何か返事をすると本物の鳥のように僕達の周囲を飛び回り始めた。
性能とかはよくわからないけど、愛嬌だけでも十分な役割を果たしている気がする。屋敷に誰かいてくれたらペットとか飼ってもいいかも知れないな。
「じゃあ、最後は赤いのだな」
「私にもあるの? マスター」
「赤いのだけなしじゃ不公平だろう? それにやっと赤いのに完璧なモノは入ったからな」
「源氏さん。いつも気になったんですけど、なんで凪が
「ん? がーははっ。赤いのがうちに初めて来たとき、ボロボロで血まみれだったんじゃ。だから赤いので呼んでる」
「凪が!?」
「えへへ……昔、探索者になりたての頃、無茶しちゃってね。あの時はマスターにお世話になったわ」
「入ってすぐに、タオル。水。おなかすいた。の言葉だったからな。わしを見て怖がらない根性で助けちまった」
マスターと凪の意外な関係性を知ることができた。それにしても凪の過去か。いつか聞いてみたいと思う。僕達と知り合った時点では一人暮らしだったみたいだからな。
そして、満を期したようにとある縦長の四角い箱を取り出した。
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