第49話 二十階のフロアボス
二十階は真っ暗闇に包まれた廃墟だった。
空には大きな満月が光り輝いていて、暗い世界を照らしている。
「雰囲気だけでも怖いね……」
「そうだな。ひとまず、逃げ道はちゃんと確保してどんな魔物なのか見て逃げよう」
「は~い」
ゆっくり廃墟の中央に近づいてくると、十階同様にアナウンスが聞こえて来る。
---------------------
クラウンダンジョン二十階のフロアボスと戦いますか?(Y/N)
---------------------
「よし、では行くぞ!」
「「「「了解!」」」」
Yを選択する。
十階でも何度も見た光景だけど、空から巨大な光の玉が降りて来る。
地上に降りた光が周囲に広がると、一体の魔物が佇んでいた。
地面から少し浮いていて、真っ黒いローブと深く被っているフードの中から赤い瞳が光っている。
「グランドリッチ。魔法が強力なフロアボスだよ。みんな魔法に巻き込まれないように気を付けてね」
「了解」
そもそも宙に浮いている時点で接近で戦う人にとっては不利でもある。
「少し戦ってくるね!」
「気を付けて」
「あい!」
凪が一気に駆けつける。
ヘイストのおかげもあるだろうけど、元々素早さが高くて身軽でもあるから、驚く速さで走る。
凪をターゲットしたグランドリッチから魔法が放たれ始める。
「魔物ってズルいわね。詠唱もないじゃない」
「あはは……魔法使いは詠唱が大変ですものね。でも無詠唱ができるものもあるんですよね?」
「そうね。基本的に弱いものばかりだけど、モンスターカードの中に詠唱速度を上げてくれるものがあって、それがあれば無詠唱になる魔法もあるわ。その代表的な例が――――――あれね」
絵里さんが指差すのは、凪が一生懸命に魔法を避けているグランドリッチだ。
「なるほど。グランドリッチのモンスターカードって詠唱系の効果があるんですね?」
「そうね。個人的には是非とも手に入れたいんだけど、あまりにも高すぎて手が出ないわね。だから栞人くんがいつか拾って装着してくれると嬉しいわ~」
「カード・レプリカがあれば共有できますからね。うちは魔法職が二人いるので効果が大きいですね」
ふと、もしアップグレードしたらどうなるのかなと気になる。
現在二枚ドロップ率を上昇させているから、グランドリッチは手に入れた方がいいかも知れないな。
いっそのこと、アップグレード品にして六花に装着してもらうのが一番良いのか? 絵里さんには魔素量が増えるカードにしてもらいたいから。
グランドリッチと戦っている凪はというと、やはり有効な攻撃手段がない。
空を飛んでいるからでもあるんだけど、一番厄介なのは魔法を撃ちながら縦横無尽に動き回っている。近づく前に魔法を放たれてしまうのだ。
厄介な魔法は爆発を前に放つ魔法だ。詠唱なしで放たれる爆発は範囲も広くて、何よりも一瞬で放たれるので対策が必要だな。
威力はそこまで酷くなさそうだが、凪で追い詰めた時に直撃を喰らっていて大きく吹き飛ばされていた。
それにしても凪の本気の戦いを始めてみるんだけど、双剣を盾にして魔法から身を守れるんだな。
凪の戦いを見守っていると、ますます盾が欲しくなるな。今使っている直刀は短さもあるから身を守れる盾があるといいかもしれない。源氏さんのところに行ったら頼んでみよう。
「では少しだけ応戦してみようか! 魔法にはくれぐれも気を付けて。六花は急いで凪の回復を頼んだ」
「「「了解!」」」
最初に花音の矢による攻撃が放たれてグランドリッチに直撃する。が、まさかの矢が通り抜けた。
グランドリッチは矢を気にすることなく、近くの凪に魔法を放ち続けていた。それにしても魔素量って無限なのか? と思えるくらい撃ち続けているな。
六花が凪の下に駆け付けて回復魔法を掛けている間に絵里さんが魔法を展開させてグランドリッチを狙う。
なるほど……矢は効かないから避けられないけど、魔法は効くようで迎撃し始めた。
それにしてもたった一体で攻撃から迎撃までいくつもの魔法を展開させるのはフロアボスに相応しいと思える。
魔法を魔法を相殺しながら攻撃魔法でけん制までするのだから、知性もかなり高いと見れる。
回復を終えた妹が光の槍で参戦するが、まさか両側に迎撃する魔法を放ち始めた。
「では一旦引くとしよう!」
「「「「了解!」」」」
グランドリッチの魔法を気にしながら、二十階から出口を通って十九階に移動した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます