第48話 ゴブリンアサシン
ゴブリンは小鬼とも呼ばれ、緑色の肌に身長は百三十センチ程、目は残酷極まりない魔物のそれで耳が尖っていて見た者ならみんなが口を襲えて気持ち悪いと言うだろう。
僕が今まで対峙したゴブリンというのは、そういう類のゴブリンばかりだった。
しかし、初めて対峙するゴブリンアサシンは小鬼とは思えない程に強い気配を発している。
肌も普通のゴブリンよりも黒に近い緑色になっていて、両手に持つ二振りの短剣も普通の武器ではないのが分かる。
油断せずゴブリンアサシンに攻撃を仕掛ける。が、素早く避けられた。
六花のヘイストのおかげでゴブリンアサシンの攻撃をギリギリで避けられた。
「にぃ! もし当たっても私の毒回復魔法があるから!」
それは……とても心強いなっ!
相手のカウンターに合わせてさらにステップバックからカウンターを仕掛ける。
移動に体重が乗っていたのか止まることなく突っ込んできたゴブリンアサシンが、右手に持っていた短剣で僕の剣戟を防ぐ。
するっと斬れると思っていたのだが、まさかそのまま僕の剣に弾かれてゴブリンアサシンが吹き飛んだ。
ゴブリンジェネラルやゴーレムの防御力でさえ斬れたのに、まさか弾いた!?
そうか……これもスキルか!
才能だけでなく魔物にも様々なスキルが存在していると聞いている。
恐らく武器を弾く系のスキルだったと思われる。
一度呼吸を整えて、もう一度対峙する。
ゴブリンアサシンも焦っているのが分かっていて、甲高い声で鳴き声をあげている。
さて、こうなったらこっちも出し惜しみしている場合じゃないな。
少し離れている距離だが、目くらましのために『カードスラッシュ』を真横の形で放つ。
虹色に輝く剣戟が飛んでいく。
これは六花のヘイストのおかげで、飛んでいく速度も速くなっている。
それに合わせて一気に距離を縮めていく。
ゴブリンアサシンも短剣に紫のオーラを集めて何かを放つが、カードスラッシュには勝てず消え去った。
反応速度は並外れているようで、すぐにうつ伏せになってカードスラッシュの斬撃を避ける。
安心したのか通り過ぎる斬撃を見てニヤけている表情が見えた。
「でも残念。それはただの泳がせなんだ」
うつ伏せになっているゴブリンアサシンに向かって、二発目のカードスラッシュを放つ。
「カードスラッシュはな。消費魔素量も少ないが、何より――――――再使用時間なしで撃てるのが強みなんだぜ!」
絶望に染まった表情のゴブリンアサシンが僕を見上げながら、カードスラッシュによってその場から姿を消した。
目の前のモンスターカードを手に取る。
「あれ? ゴブリンアサシンってレアカードか」
「だって階層に一体しか存在しないし、リポップ時間は十分だからね~お疲れ様。ケントくん」
「ありがとう。凪が大変だと言っていた意味が分かったよ。剣が弾かれたのもスキルだね?」
「うん。パリィというスキルなんだけど、本来なら相手の方が吹き飛ぶはずなんだけど、武器の差が圧倒的すぎると自分が飛んじゃうんだ」
やっぱりあれはスキルだったんだな。
それにしても、レアカードって何もフロアボスのモンスターカードだけではないのも驚いたな。
となると、やはりレアカードのドロップ率も最大に上昇させておきたい。
「にぃ~かっこよかったよ~」
「ありがとう。六花。ヘイストがなかったら、多分負けていたかも知れないな」
妹に感謝を込めて、頭を優しく撫でてあげる。
「それにしてもゴブリンアサシンと戦っていたらゴブリンシーフのの亡骸が大量にあるんだな」
「ちょっと張り切り過ぎました……へへっ」
花音もそうだけど、六花も絵里さんもゴブリンアサシンとの戦いを邪魔しないようにと周囲のゴブリンシーフを殲滅してくれたみたいだ。
みんなに感謝を伝えて魔石採取に回って、凪の案内でとある場所にやってきた。
それは二十階に繋がっている扉だった。
「この先に二十階のフロアボスの魔物…………私が一人で勝てなかった魔物がいるんだ」
凪の強さは近くで見てきたから分かっているつもりだけど、恐らく凪自身が持つ最大実力はまだ見ていない。
となると生半可な覚悟では倒せないかも知れない。
「一度フロアボスがどういう魔物なのか見ておこうか」
「それがいいと思う」
せっかくのチャンスなので、僕達は扉を通り、フロアボスがいる二十階に足を踏み入れた。
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