第47話 十九階
十六階を通り抜けて、十七階に辿り着いた。
変わらない景色の中、僕の視界に映ったのは――――
「え~! 建物が歩いているよ!」
「建物というよりは、
「二人とも。あれは瓦礫じゃなくて岩でしょう? あれはゴーレムという魔物だよ」
ゴーレムか!
周りの廃墟と同化してて瓦礫に見える。妹が言う通り、建物が歩いているようにも見える。
「ゴーレムは刃物壊しとして有名だから気を付けてね」
見た目でも分かるように体が岩というか瓦礫でできているから、普通の刃物ならすぐにダメになりそうだ。
ただ黒龍漆聖刀は黒龍オーラを纏えるので、それで斬っても問題ないかも知れない。それに金属再生なんかも持っているので、きにせず戦っても問題なさそうだ。
「は、はいはい!」
「花音? どうしたの?」
「ちょっと言いにくいけど、私の矢ではゴーレムにあまり役に立たないかも。貫通矢で貫通させてもいいけど、貫通矢って使う魔素量が激しくてあまり使いたくないかな」
「了解。ではゴーレム相手は花音の援護は極力なしで、絵里さんの魔法のサポートをお願い」
「「了解!」」
ゴーレムが一歩歩くたびに周囲に軽い地鳴りを響かせるし、止まっている時間の方が少ない。
つまり、この階層での魔物探しは音で探しやすくて楽に思える。
最初のゴーレムは僕が先に斬り落とす。
想像通りというか、固そうなゴーレムでも黒龍漆聖刀で豆腐のように簡単に斬れた。
するっと落ちたゴーレムのカードを拾って、八枚目のドロップ率上昇を達成した。目標の三十枚目まであと二十二枚となった。
凪も刃こぼれがあるからと、あまり本格的に参戦はせず、絵里さんのターゲットの標的を自分に向けてサポートに徹した。
妹はというと――――
「六花ちゃんの光の槍って、もしかして基本属性に貫通があるのかも知れないわね」
絵里さんが言うとおり、光の槍が簡単に貫通して一撃で倒せたりした。
雑魚魔物で直撃して一撃で倒せない魔物の方が少ないんだけど、光の槍が強いのか、はたまた妹の魔力値が高いのかよくわからない。
ステータスの数値を聞くのは失礼らしいから聞いていないけど、妹もあまり語ろうとしないのはきっと凄い才能を持っているのかも知れないな。
そもそも髪が金髪になるくらい強い才能みたいだし、光の槍だけじゃなくて、回復から聖域、ヘイストなど補助魔法も凄いからな。
十七階は僕が思っていたよりもずっと楽で、動きが遅いゴーレムは僕達の的になっていた。
十八階に移動するとゴーレムの数がただ単純に二倍になっただけだったので、何の苦労もせずに次の階層に向かった。
◆
十九階。
ここで現れたのは、まさかの――――ゴブリンだった。
「廃墟でゴブリンがいると違和感が凄いな」
「ふふっ。凄く分かるけど、このゴブリンは今までのゴブリンと比べ物にならないから気を付けてね。名前は、ゴブリンシーフ。基本的に群れで動いていて、ブラックハイエナと同じ感じだけど、厄介なのは見てすぐに叫ぶくらいには知能があるってこと。それと攻撃も避けるから気を付けてね」
「「「了解!」」」
先に花音の矢が飛んでいく。
目にも止まらぬ早さで撃たれた矢に反応できずに、ゴブリンシーフが一撃で倒された。
「一応遠距離攻撃が有効打なんだけど……まぁ説明しなくてもそれはいいか。花音ちゃんって本当に凄いわね」
「えっへん! ゴーレムではあまり役に立たなかったから、こういうところでは花音が役に立つのです!」
「よし、ではひとまず様子を見るために僕と凪は守りに徹して、他のメンバーは遠距離攻撃で倒していこう」
「「「「了解!」」」」
攻撃を繰り出す速度は花音が一番速いので花音がどんどん殲滅していく。
前方は殆ど花音が調子よく倒していくので、六花が左側、絵里さんが右側の魔物を狙って魔法を放っている。
僕の視界に映るゴブリンシーフがどんどん姿を消していく中、不思議な気配があったのでそちらに視線を向ける。
「ゴブリンアサシン! この階層のフロア中ボスの魔物よ!」
わざと教えてくれなかったけど、それもそうで、全てを教わってばかりだと、もしもの時に対応できなくなっちゃうからな。
僕が何か不思議な感覚を感じ取ったので答えを教えてくれたのかも知れない。
ほんの少しだけ視界の先の景色が揺らぐ。
透明化しているらしいが、動くと空間が揺れるので分かるが注意深く見ないと見つけられないし、ゴブリンアサシンが動かないと全く分からない。
それくらいゴブリンアサシンの知能も高いということだ。
「すまん! ゴブリンアサシンは僕が先に戦わせてもらうね!」
「分かった! でも気を付けてね。今まで戦った相手の中では――――ケントくんにとって一番難しい相手かもしれない!」
それが何を意味するのか、すぐにわかった。
ゴブリンアサシン。
文字通り、凄まじい速度で動き回るタイプ且つ武器は見ただけで
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