第43話 レベル20
初めてゴブリンジェネラルと一人で倒して、心から溢れた嬉しさで両手を上げて喜んでしまった。
「にぃ~! かっこよかった!」
「凄くかっこよかった!」
「栞人さんがどんどん規格外になっていきます……」
「あのジェネラルを一撃で倒せる人は初めて見たわ」
やって来たメンバーからはそれぞれ感想が伝えられて嬉しかったけど、何より嬉しいのはこれで僕もみんなと戦いで並んで立つ事ができる事。
まだ
しっかり喜びをかみしめた後は、ちゃんと魔石を全部回収して次の階層に向かった。
十一階に到着してすぐに妹が手を上げた。
「はいはい~! にぃと私から発表があります!」
「ん? 僕も?」
「だって、にぃも上がったんでしょう?」
最初妹は何を言っているのかと思っていたら――――――「スキル!」と言われてやっと気づいた。
ゴブリンジェネラルに勝った事が嬉しすぎて、レベルが十九から二十に上がっているのをすっかり忘れていた。
「そういやそうだった!」
「えっへん! では発表します~! にぃと私がレベルアップしました! これで二十になって新しいスキルを手に入れたの~」
「二人がまたどんな素晴らしいスキルを獲得したのか楽しみだね」
「じゃあ、僕からだね。僕が今回手に入れたスキルは――――使ってみるか」
人がいない場所を確認する。
今回獲得したスキル『カードバースト』は消費魔素がそもそも足りてないけど、絵里さんのおかげで連発しても余るくらい魔素が上がっているから大助かりだ。後でもう一回感謝しておかなくちゃ。
説明文によると、広範囲の攻撃スキルであると書かれている。
『カードスラッシュ』は広範囲ではないけれど、三段ヒットができるようになっていて、小さな範囲スキルと言えなくもない。
それに比べて今回は広範囲とちゃんと書かれているから、範囲をしっかり確認しておかないと使いどころが難しいと思う。
「では――――カードバースト!」
カードスラッシュよりもずっと大きな力が剣に灯り始める。
黒いオーラと虹色のオーラは混ざり合わないものの、お互いの存在を拒絶することなく一緒に灯っている。
剣に力が溜まり始めてから十秒が経過した。溜まっている間は自由に動き回れそうなので、使えるまで逃げ回ってもよさそう。
さらに十秒が経過しても放てそうになく、さらに十秒が経過した。
溜め始めてから三十秒でようやく放てそうになったので、前方に向かって剣を振るった。
虹色のオーラが放たれて不思議な音――――電子音に似た不思議な音を鳴らしながら広範囲に広がった。
絵里さんのファイアストームのような派手さは全くなく、見た目だけなら虹色の波動が周囲に広がるので地味と言えば地味だ。ただ――――
「綺麗…………」
凪が声をこぼすように虹色の波動が広がるというのはとても綺麗だ。
範囲は広範囲というだけあって僕から前方に扇状に広がっていき、角度は大体右左に四十五度ずつで、距離は大体十五メートルくらいある。
説明文通りとんでもない広範囲だ。
比べる相手は違うけれど、絵里さんと比べると範囲は遥かに狭いは狭い。
ただ溜めている間に走れるのが詠唱とは違う強みでもある。距離感さえしっかり覚えれば、味方の助けにもなると思う。まあ、溜まるまで三十秒もかかるので咄嗟には難しいけれど。
「僕の新しいスキルは広範囲攻撃スキルで、絵里さんのおかげで複数回使えそう。カードスラッシュと組み合わせても何度か使えるから戦力として考えていいかも! ただ……使うまで三十秒もかかるから、咄嗟には使えないね」
「それって溜めながら動けるのかしら?」
「そうですね」
「それはとんでもないわね…………魔法は移動詠唱ができないから、使い勝手を考えれば、三十秒でもお釣りがくるくらいだわ」
やっぱり絵里さんも同じ見解みたい。
長年後衛を務めているからこそ、視野の広い人と意見が合うのは素直に嬉しい。
「じゃあ、次は六花ちゃんの番だね」
「うん! にぃのスキルももちろん凄いけど、私が獲得したスキルの方が凄いかも!」
光の槍を連発する妹が
「じゃあ、いくね? ちなみにパーティー全員の補助魔法だから!」
そう話した六花は詠唱を始める。
光の槍は連発しているが、基本的に無詠唱で放つのはそれだけで、他の魔法には詠唱が必要で不思議な羅列の言葉を声にする。
珍しく少し長めの詠唱を続けた。大体三十秒か?
「――――――
僕達の身体に緑色の魔力が宿る。
「効果時間は大体三十分! 魔素はそこそこ消費するけど、効果は凄くいいと思う!」
ああ…………これはとんでもない魔法だね。
六花の補助魔法『
凪曰く、全ステータス三割上昇の補助魔法があるだけで世界の最高峰のパーティーメンバーになれるという。
そして、今回使った『
聖域とは効果は全く異なっており、ステータスは一切上昇
代わりに、
僕の新しいスキルが霞むくらい、とんでもない魔法だ。
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