第41話 待ちに待った武器
みんなとも話し合って、魔物の素材を剥ぎ取るのはやめることにした。
というのも、荷物の量が増えてしまうからだ。
十一階を攻略し、十二階にやってきたが、出現する魔物は十一階と同じくレッサースパイダーとリザードが単純に複数出て来るようになった。
十三階も同じく、三体が群れになってうごめいていて、だからなのか他のパーティーも多かった。
ここでレベルを二十まで上げるのも良いとのことだ。
レベルが十九になった頃、遂にその日がやってきた。
僕達がやってきたのは――――――最上級鍛冶師源氏さんのお店の前だ。
「にぃ! ふぁいと~!」
「お、おう!」
一度深呼吸をして目の前の扉を開いた。
相変わらず中には強面の探索者から強そうな探索者たちが武器を選んでいる。
花音と絵里さんは初めてくるようで、「ほえ~」と声をあげていた。
並んでいる武器を潜り、カウンターに向かうと相変わらず強面の源氏さんが鋭い目を光らせていた。
「お久しぶりです!」
「…………小僧。武器を見せろ」
「はいっ!」
借りていた『鋼鉄の長剣+』を渡した。
鞘から剣を抜くと、じーっと僕が使い込んだ剣を見つめる。
その目はまるで自分の子供を見るかのような優しい目をしている。
数十秒程剣を見つめた源氏さんは剣を鞘に戻して、それを持ったまま裏に消えていった。
数分して裏から現れた源氏さんは、その手に持っていた剣とは違う剣を持って現れた。
「小僧。これを抜いてみろ」
そうやって僕に渡してくれた剣を受け取る。
柄部分は非常に握り心地が良くて、柄の下部分は外せるようになっていて、刃物が中に入っている。
柄と刀身を繋ぐ部分には黒い宝石があり、柄と刀身が宝石で繋がっている不思議な構造だ。
鞘も手に握りやすくて、刀身が細めなのか握りやすい。
少しだけ抜いて宝石が見えていたけど、もっと抜いていくと、宝石が終わり刀身が見え始める。
刀身は真っ黒い色に染まっている。光沢が全くない綺麗な漆黒の色だ。
「どうだ」
「手になじみます。初めて握るはずなのに初めてじゃないみたい。刀身が思っていたよりも細くて今まで使っていた長剣という感じではなくて、短剣とも違う雰囲気ですが、まだ使ってないのにものすごく使い慣れてる気がして――――そうか。僕の剣が一番届きやすいのってこれくらいの
「くっくっ。少し分かって来たか。長剣を渡したのには理由がある。本来短い武器を使う者はリーチを勘違いする者が多い。短いリーチはそれだけで不利だ。だから無理矢理に力任せで剣を振るう。今の小僧なら使いこなせるだろうな」
「はいっ……! ありがとうございます! え、えっと、それで料金はいくらくらいでしょうか?」
「一億」
「ええええ!?」
「あたりめぇだ。俺様が作ってやった武器だぞ」
とんでもない額が請求されると思っていたけど、やっぱりそうか……。
「今すぐじゃなくてもいい。ゆっくり払え。俺様が欲しがっている素材を持ってくれたら少し割引いてやる」
「!? ありがとうございます! 普段は魔石収入があるから、素材は全てこちらに持ってきます!」
「くっくっ。アルカディアに卸してくれて構わん」
「えっ!?」
「なんだ?」
「い、いや……まさかその名を聞けるとは…………」
アルカディアが巨大な組織なのは知っていたけど、ここまで繋がりがあるとは思わなかった。
いや、この街にあるいくつかの場所と繋がっているから、当然といえば当然か。
その時、一緒に聞いていた凪が僕の肩を叩いた。
「ケントくん。ジェネラルの魔石をマスターに見せてあげて」
「ん? 分かった」
魔石収納からゴブリンジェネラルの魔石を一つ取り出す。
「ぬあっ!? み、見せろ!!」
僕の両手に乗っている直径五十センチ程の魔石を、源氏さんが奪うように取っていった。
「こ、これは……! 傷一つないだと!? これなら純度百で使えるじゃねぇか! 小僧! すげぇじゃねぇか!!」
「でしょう~?
「!? に、にぃは魔石採集なら右に出る人がいないからねっ!」
「え、えっ? これって続いて言うの?」
「そうなんじゃない? でも私は特にないわ。だって何も言わなくても凄いのは知ってるもの」
みんなが話し終えると同時に源氏さんが声をあげた。
「こ、小僧! これを俺に譲ってくれ! 頼む!」
「えっ!? も、もちろんいいですよ? えっと、もう一つ要りますか?」
「要る! あるだけくれ!」
「あはは……一つしかないので。どうぞ」
源氏さんには素晴らしい剣を貰えたので、力になるなら魔石一つや二つくらいなんの問題もない。
「あ、みんな。ごめん。勝手にしちゃってごめん」
「全く問題ないよ~? ケントくんの戦力が増えればパーティーのためになるし、収入もみんなが不自由しない範囲なら全然問題ないしね。毎日美味しいご飯が食べれて、暖かいところで眠れればいいからね!」
「それは同感ね。ご飯は大事よ。ご飯は」
絵里さんって食い意地があるよな。それがまた彼女の魅力でもあるけど。
「源氏さん? もっと欲しかったら毎日取って来ましょうか?」
どの道、モンスターカードも欲しかったし、丁度いい機会かも知れない。
源氏さんからはものすごく感謝されながらよろしく頼まれた。
無理のない範囲で持ってくると約束を交わした。
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