第40話 十一階

 二度目のゴブリンジェネラルを倒してクラウンダンジョン十一階にやってきた。


 廃墟になった街が広がっている。


「ここの魔物は建物の中から現れるから気を付けてね」


「「了解!」」


 僕と凪が前衛として前を歩き、間に六花と絵里さん、後ろに花音が歩く。


 花音の才能は弓使いにとって有利なスキルが沢山揃っているそうで、弓だけでなく周辺を感じ取るスキルが揃っているそうだ。


 これなら後ろからの不意打ちに警戒できるので、一番後ろの担当になってくれた。他の人が一番後ろだといち早く反応できないためだ。


 廃墟ビルの間を歩いて進む。


 その時、隣の廃墟ビルの二階部分からこちらに向く殺気が感じられて、次の瞬間、人と同じ大きさのトカゲが飛んできた。


「光の槍!」


 飛んでくるトカゲに向かって的確に魔法を飛ばし、光の槍が命中したトカゲは力なくその場に落ちてきた。


 落ちたトカゲの頭に剣を突き刺す。


 一瞬体がぶるっと震えて、そのまま絶命したのを確認する。


 確認のために魔石採取すると、ゴブリンと変わらないFランク魔石が採取できた。


 と考えるとクラウンダンジョンでゴブリンだけを高速で狩り続けるのは、今考えれば収入的な意味では効率良かったのかも。


 ただ、収入を得るためだけに頑張っているわけではなく、将来を考えればあまり取りたくない作戦だな。


「ケントくん。念のために伝えておくと、ゴブリンからは取れないけど、ここら辺の魔物からは素材を剝ぎ取れるんだ。爪とか牙とか皮とか」


「そういや、以前そう言ってくれてたね」


 凪から、ゴブリンだらけのクラウンダンジョン一階から十階はあまり収入が見込めないと凪は言っていた。クラウンダンジョンは十一階が本番だとも。


「どこの部位が高く売れるんだ?」


「トカゲは爪が一本で――――――百円だね」


「百円」


「うん。百円」


「…………」


「そんな顔しないでケントくん。魔石を取り出すよりはずっと楽だし、大きさも小さいからね」


 確かに魔石と比べたら少し小さいがこれだけでも大変だと思うんだけどね…………えっ!? まさか!?


「ふふっ。気づいたと思うけど、両手で爪が八つ取れて、こうやって簡単に取れるから」


 凪は持っていた剣でトカゲの爪の根本に刃を入れて簡単に剥がした。


「おお~上手いね!」


「えへへ~私はここでお金を貯めたからね~。ね? 花音ちゃん」


「うふふ~うんうん~凪ちゃん~」


 …………触れてはいけない領域に触れてしまった気がする。


 まだ経験はないだろうけど、六花も肩を落としている。


「あれ? 絵里さんはあまり驚かないですね?」


「えっ? そ、そりゃね~私は常に臨時パーティーを組んでいたから、そういう・・・・ことは全部下々がやっていたから。私は魔物を倒しまくる方がいいわ」


 あはは…………こちらもこちらで規格外だった。


 絵里さんはどこか女王様気質があるからね。たまに子供っぽいところがあるから、人から嫌われる要素は全くない。


 うちの妹と真逆の属性だけど、どちらも守ってあげたくなるような感じだ。


 それにしても…………そっか。うちのパーティーってみんな髪の色が変わっているんだな。


 凪は銀、六花は金、花音は青、絵里さんは赤。


 周りのパーティーからものすごく見られるようになったのはそういう理由かも知れない。


 トカゲはリザードという魔物か。


 他にもトカゲ以外にも、レッサースパイダーという大型蜘蛛で、大きさは五十センチくらいの魔物がいた。


 現れた瞬間、女子組からタイムアタックでもするかのように瞬殺していた。


 モンスターカードを…………と中々言いにくかったけど、何とか説得して一体だけ譲ってもらって倒す事になった。


 何とか二種類ある魔物のモンスターカードでドロップ率を上昇させて、六回目のドロップ率を上昇させた。




 ◆とあるダンジョン◆




「く、くそがああああ!」


 目の前のオーガを倒した軍蔵ぐんぞうは息を荒げて声をあげる。


 いつもならいるはずの取り巻きも今では一人もいない。


 倒した魔物の魔石を取り出すのも、素材を剥ぎ取るのも、全て自分でやらないといけなくなった。


「栞人……あいつだ! あいつのせいでこうなったんだ! くそ…………あんな雑魚が銀のやつとよろしくやってるのか! 俺様はこんなに苦労しているのに! くそがああああああ!」


 軍蔵の叫びは、周囲のパーティーには異常に見えて、段々と人から距離を置かれ始めている。


 それも相まって、彼の周囲には人々が全く寄り付かないのだ。




 その時、




 黒いローブを身にまとった人が近づいて来た。


「兄さん。随分と荒れてますね」


「んだと! 誰だてめぇ!」


「ふふっ。そう怒らないで。僕は兄さんの味方・・だよ? さあ、少し話をしない?」


「なんで俺様がてめぇなんかと――――」


「綾瀬凪。彼女を好き勝手にできると言われたら?」


 軍蔵の顔が変わる。敵視していた表情は一瞬で消え去った。


「聞かせろ」


「ここでは無理だね~付いてきて?」


 ローブの男が振り向いて歩いて行く。軍蔵は悩むことなく、ローブの男を追いかけた。

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