第27話 カードリンク

 五階での狩りは一週間以上続いた。


 そして、


 ――【レベルが14から15に上昇しました。】


 ――【新しいスキル『カードリンク』を獲得しました。】


「「上がった~!」」


 今回も妹と声が被った。


 ハイテンションのまま走って来た妹が両手をあげて、二人でハイタッチをする。


 両手にひんやりとした感じがあるが、それよりも嬉しさが勝る。


「凪! 無事上がったよ! ありがとうな!」


「凪姉! ありがとう~!」


「いえいえ。二人の頑張りは大きいよ。えっと……」


 少し恥じらう凪が凄く可愛らしい。

 

 一体どうしたのだろうか。


「あっ! にぃ? 仲間外れはいけないよ?」


 仲間外れ? ……………………あ!


 凪と視線があって、彼女が前に出した手のひらに僕と六花がハイタッチをする。


 ちょっぴり恥ずかしげな銀の天使がとても可愛かった。


「六花ちゃんはどんなスキルを獲得したの?」


「えっとね~ダブルスペルというスキルだよ~? 二つの魔法を同時に使えるみたい」


「ダブルスペル!? レベル15で覚えるんだ…………本当に凄いね」


「えへへ~!」


 よく分からないけど、凄いスキルのようだな。


 兄として鼻が高いというモノだ。


 うちの妹最強!


「にぃはどんなスキルを獲得したの?」


「ああ。それがまだイマイチ分からなくてな。ちょっと確認してみる」



---------------------

 『カードリンク』

 カードホルダーに保管しているカードが適応される。

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「はああああ!?」


 びっくりを通り越してその場で後ろに倒れてしまった。


 それでもステータスの画面は目の前にあるので離れるわけもなく、倒れ込んだ僕の目の前で存在感を放っている。


 凪からカード系列の才能をいくつか聞いた事がある。


 その才能も増え幅は大した事がなくて、さらにカードが高額だし、ドロップ率上昇なんて聞いた事もないらしい。


 そんな不遇のはずのカード系才能なのに、僕の才能は次々とんでもないスキルを獲得し続けている。

 

 前回獲得した『カードスラッシュ』もカード枚数で威力が上昇すると書かれていたし、消費魔素が1なのを加味すれば、晩成型と捉えてもいいと思う。


 スキル『カード』だけでも既に凄いと思うのに、まさかカードホルダーに入れているカードも全部適応される!?


 つまり、あれか? ゴブリンカードを百枚集めたら力+100も簡単に達成できるのか?


 そういや、スキル『カード』の特典の中に、カードをアップグレードさせたまま、カードホルダーから取り出せなくなるという特典があった。


 つまり、このスキルを活かすための特典だったという事だ。


 取り出せなくなるけど、カードホルダーでもアップグレードしたカード効果を発揮してくれれば、ものすごく心強い。


「にぃ? そんなに驚くくらいの事なの?」


「あ、ああ。すまん」


 周囲を見渡して誰も聞いてないのを確認する。


「スキル『カードリンク』というのを獲得したよ。内容は、カードホルダーの中に入っているカード全てが――――反映されるみたい」


「「ええええ!?」」


 二人とも目を大きくして驚いた。


 色んな装備の中でも取り分けカードは特別な装備でもある。


 今はまだ下位のモンスターカードしか持っていないけど、上位魔物や最上位魔物のモンスターカードともなるとその効果はとんでもないモノだ。


 それを5枚しか装備できないというデメリットを覆すこのスキルは、さらに5枚だけアップグレードできる僕にとってはとんでもない効果をもたらすだろう。


 まぁ、そもそもモンスターカードが無ければ、それも意味はないのだけれど……。


「それにしても、ケントくんのスキルってどれも大器晩成のスキルばかりだね?」


「ん~言われてみるとそうかも? 大器になれるかはともかく、晩成型なのは間違いなさそう」


「もしゴブリンカードでも一万枚くらい手に入れたら、ケントくんって無敵になる気がするよ?」


「一万!? 無理無理……」


「でも一日二枚手に入れたら二十年後には……」


 二十年!?


「いやいや! そんなに長い間、凪と六花をこき使うつもりはないよ! どちらかというと、まだ弱い僕だけど、凪のためにもなりたいから、それよりも先に進みたいんだ」


「ふふっ。ありがとう。でも急がず、ゆっくり行こう?」


「分かった」


「は~い。そこまで~少しずつ近づくの禁止~」


 僕と凪の間に割り込んで来た妹が両手を伸ばして僕達を引き離す。


「あはは……では次の検証に入りたいから一度家に帰ってもいいかな?」


「「は~い!」」


 その足で僕達は一度家に戻って来た。




「まず、六花に渡していたアップグレード品ゴブリンカードが一枚。ゴブリンウォリアーカードが四枚だな。僕のカードホルダーには、通常ゴブリンカードが四枚、ゴブリンアーチャーカードが二枚入っているよ」


 この数日間の狩りでウォリアーカードが四枚、アーチャーカードが二枚増えたので、その分で六花の力を強化している。


 今の六花の力は+18も増えていて、非常に快適に走れるそう。


 僕が装着していたカードも全て出して、目の前の全てのカードをホルダーに入れてみる。


 ゴブリンカード(+)が一枚。


 ゴブリンカードが九枚。


 ゴブリンアーチャーカードが二枚。


 ゴブリンウォリアーカードが四枚。


 これで力+18、器用+14を確認した。


 やはり、ゴブリンカード(+)は装着しないとアップグレードが発動しないようだ。

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