第25話 豪邸
次の日。
家を出るとすぐに目の前に大きなトラックが待っていた。
「初めまして。引っ越しセンターの者です」
「えっ!? 頼んでいなかったはずですけど……」
「上の者の指示です。栞人様は気楽にしてくださって問題ありませんから。さあさあ、案内してください」
「ええええ!?」
勢いに押されて筋肉ムキムキの男性に家の中を案内する。
そこから四人の男が入って来て、びっくりする速さで片付けが進んで行く。
途中で女性も一人入って来て、妹の荷物を一緒に片付け始める。
あっという間に荷物が片付いて、トラックに運ばれた。
元々運ぶ程の荷物もないけれど、意外とボロボロだが衣服は多めに持っている。
両親が亡くなった後、国から定期的に送られてくる衣服だ。
こちらに選ぶ選択肢はないが、こうして貰えるだけでありがたかったから、中々捨てられずにいた。
一瞬で片付けが終わり、トラックに乗せてもらい、シェアハウスに向かった。
「ここが皆さんがこれから過ごすシェアハウスになります」
「ひ、広おおおおおっ!?」
「間もなく凪様もいらっしゃいますので、では中に運びますのでゆっくりしてくださいませ」
「え、えっと……」
「上の命令ですのでお気になさらず。それよりも――――これからの栞人様の活躍、非常に楽しみにしております」
どうしてここまで僕を大切にしてくれるのか違和感しかないのだけれど、凪が来たら色々聞いてみようと思う。
それにここにいる人達だけで、僕と妹と制圧しようと思えば、もう僕達の命はないと思う。
筋肉ムキムキな見た目もそうだけど、
もしこの場に凪がいても、彼らの一人ですら勝てないと思われる。
ここは一つ素直に従っておく事にする。
妹も察したようで、色んな事から目を背けて、広々としたシェアハウスというか、豪邸の探索を始める。
まず庭。
ただただ広い。めちゃくちゃ広い。
ここはダンジョンか? ってくらい。それは言い過ぎか。
屋敷から壁まで歩くとなると数分はかかりそうなくらい広い。
ただ何もない広い庭なので、見栄えとかはない。
何かの練習とかで使えるだろうか?
次は玄関口。
大きな扉が豪邸をより際立たせる。
このタイミングでもう一台のトラックが入って来て、中から凪が降りてきた。
事情を説明して凪と共に屋敷の探索に戻る。
次は屋敷の中。
洋風な外観なのに、入ってすぐに靴脱ぎ場があって、その隣に衣服スペースが広く取られているので、外に出る時のコート類はここに置いておけそうで、靴を置けるスペースも多い。
スリッパに履き替えて中を進むと、横道に客間と客用トイレなどが並んでいる。
そのまま真っすぐ進むと、広いリビングが現れた。
リビングと言えるのだろうかと思えるくらい広い。
大きなテレビやふかふかしたソファーが置いてあって、凪と妹がすぐに座るとスカートがふわりと絶対領域が露になりそうになった。
広いリビングから右手には男女別にトイレと風呂がそれぞれ分かれている。
風呂は思っていた小さなモノではなくて、小さな銭湯じゃないかと錯覚するくらい広い風呂場で、なんと小さな露天風呂もあった。
風呂の逆側に向かうと厨房があって、料理しやすくするための家電製品はもちろん、最新鋭の調理器具が並んでいた。
厨房で最も嬉しそうにしていたのは六花で、僕では理解できない色んな呪文を唱えながら調理器具に目を光らせた。
今度はリビングから両側に伸びている階段を上り、二階に向かう。
どうして両側に階段が分かれているのかと思ったら、シェアハウスだから男女別々に分ける時に使うためだそうだ。
ただ、どちらから上がっても二階から行き来する事はできるのだが、間に両側から鍵がかかるタイプの扉があって、妹の提案で早速取り払った。
これで右手も左手もどちらの階段から上がっても二階を全域使えるようになった。
二階は左右が同じ作りになっていて、共通のトイレがあり、部屋がそれぞれで十二室ずつあった。
部屋の中はみんな同じ作りになっているので差はない。
どの部屋からも外が見えるような窓があり、二階からの景色は中々良いものだ。
「にぃはここ。凪姉はここ。私はここ!」
「六花!? 隣になっているよ!?」
「何か問題でも? にぃ?」
「い、いや、女子と男子とで……」
「へえ~にぃは私の隣の部屋は嫌なんだ~じゃあ、凪姉にする?」
「ち、違っ! ここでいいよ! 寧ろここがいい!」
ジト目の妹の恐怖に耐えられずに部屋決めが一瞬で決まった。
あとは二階の部屋を全て確認して、一階に戻ったタイミングで荷物の運びが全て終わったという事で台風のように去っていった。
部屋も事前に伝えていないはずなのに、妹の意向をいつの間にか汲んでいて、全て部屋に運ばれていた。
すぐに厨房に立つ二人に苦笑いしつつ、広い豪邸に住めるようになった事に驚きつつ、ふかふかのソファに座り込んで幸せをかみしめる。
これも全て凪と出会えたからだなと思う。
幸せをかみしめていると、料理ができたって事で料理を運ぶのを手伝う。
テーブルに豪邸初めての料理が並んで、いつもよりも格別に美味しい料理を堪能した。
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