第24話 凪の提案
「私は賛成~」
「い、いや……僕はちょっと…………」
「むぅ……ケントくんのケチ……」
ジト目で見つめる凪だが、それにはちゃんと理由がある。
そもそも凪が提案した事があまりにも驚くべき内容なのだ。
フリースペースに腰を下ろして、凪が提案した事を考える事になった。
「あ、あのさ。確かに僕達はパーティーを組んでいるし、毎日一緒に狩りを行って、毎日一緒にご飯を……食べ…………」
「うんうん。続けて」
「…………そっか……もう似たようなものか」
思わず自分の発言に頭を抱えた。
凪が提示したのは――――。
「ここなら魔石の販売も自由にできるし、上より高いから安定した収入を得られるでしょう? それに今のまま六花ちゃんをボロ家に住まわせるのも嫌でしょう? だからシェアハウスを借りてしまおうよ!」
そう。
凪が提案したのは、ここなら売り品に制限もないし、周りの目を気にする必要もないし、中には指定依頼なんてあって、一定の収入が見込めるからこそ、凪とのシェアハウスを借りてしまおうという提案だ。
ただし、シェアハウスを借りるからにはそれなりの条件があったりする。
その内容が凪が指差す貼り紙に書かれていた。
『秘密結社アルカディアに参加している方々にシェアハウスを格安でお貸し致します。いつでもご相談ください。※ただし、一定の指定依頼を受けて頂く必要がございます。報酬はもちろん破格ですよ☆※』
さらにシェアハウスの下にいくつかの種類が書かれていて、見ず知らずの人と一緒に住むシェアハウスもある。
「あれ? 意外にもフリーシェアハウスの方が人気あるんだ?」
僕としてはシェアハウスといっても、メンバーだけのシェアハウスを予想していたけど、下に書かれているいくつかのシェアハウスの中で、フリーの部分のいくつかは満室と表記になっている。
「それはそうよ。ここに呼ばれる多くは、ソロが多いからね」
「そうだったのか」
「もちろん最初からパーティーを組んでいる人も多くいるけど、ソロも多くいるよ。私も元々ソロだったし。そういう意味でソロ同士でシェアハウスを借りれば何かと楽な事が多いんだ。臨時パーティーも組みやすいし、気兼ねなく仲間と一緒に食事とできるし、アルカディアに選ばれた以上、怪しい人とかいないからそういう心配もないからね」
「そうか! ソロだとある意味シェアハウスで仲間を募る事ができるのか!」
「ええ。探索者はソロだと必ず限界がくるからね」
それに臨時パーティーならお互いに必要な時だけ助け合えるのもいいかも知れない。
「でもだからといって私達もフリーの方を借りなくてもいいと思うわ。ケントくんがそっちがいいというなら、私はそれに従うけど、個人的にはパーティーメンバーだけのシェアハウスがいいなぁ」
「一応三人以上であれば、指定シェアハウスを借りれるのか。シェアハウスというよりは賃貸住宅って感じか」
「三人以上で借りた時、シェアハウスの寮長を決めて、彼が良いと言えば、他のメンバーも住めるから、形はシェアハウスになるみたい。ちょいちょい申し込みがあるかも知れないわよ」
「だから賃貸住宅じゃなくてシェアハウスなんだな。ひとまず分かった。僕も毎日凪だけ夜遅く外に出るのは不本意だったから丁度いい機会だな。シェアハウスを借りよう」
「「やった~!」」
二人の天使が両手を上げて喜ぶ。
すっかり二人も仲良くなって、兄として嬉しく思う。
早速カウンターに向かって手続きを行う。
受付嬢の丁寧な説明があって、僕と妹と凪が最終的にサインをして受付を済ませた。
シェアハウスに引っ越せるのは明日になったので、明日急遽引っ越しが決まった。
アルカディアを後にする前に、貯まっていたFランク魔石を大量に売る。
買取の可愛らしい受付嬢が目を大きくして驚いていた。
上ではFランク魔石の買取値段が1,500円なのに対して、ここは2,000円と三割も高く買い取ってくれた。
大半の物は三割増しで買い取ってくれるみたい。
これだけ特別待遇を受ける事に違和感を感じてしまうが、凪曰く、表は買取ポイントが付くのに対して、ここは付かないからそこまで差があるという。
驚く程の大金を手に入れたのでソワソワしながらも、現金を持って歩く訳ではなく、不思議な技術で才能を開花した際の本人の魔力の波長を判別して反応する電子化したお金なので実感はあまりない。
凪に渡す分だけ現金にしたので、それを渡す時に両手で持った札束に驚いてしまったのだ。
彼女もすぐにATMで入金させているので、僕達はあまり現金を持ち歩かない。
買い物もどこでも電子払いができるので現金を持って歩くのは人にお金を直接渡す時くらいだ。
軍蔵のように見せびらかすために現金を持って歩く人もいる。
その日はアルカディアを後にして、喫茶店に出ると、すっかりお客さんで賑わっていた。
マスターと梨乃さんに感謝を伝えて喫茶店を後にして、家に帰って行った。
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