第21話 スキル『カード』の検証結果

 検証が始まった。


 本来なら三階からそのまま上を目指すはずが、僕のわがままでもう一度二階で検証を行う事にした。


 魔石は新しいスキルのおかげで簡単に採取できるので、どんどんゴブリンを倒して回る。


 今までなら魔石を採取するために毎回足を止めてゆっくり戦っていたのが、ただひたすらに狩り尽くす事で、たった一日で四百体を超えるゴブリンを討伐できた。


 凪のアドバイスから魔石は毎日まばらな数を売る事にして、今日は百個だけ売った。


 さらに次の日もクラウンダンジョンの二階にやってきては、ひたすらにゴブリンを狩り続けた。




「モンスターカードだ~!」




 ゴブリンの群れの中に光り輝くモンスターカードが現れた。


「こんなに早く!? ケントくん? これが例の検証なの?」


「ああ」


 目の前のモンスターカードに触れると、『ゴブリンカード』を手に入れた。


 しかし、スキル『カード』が発動せず、特典を与えられなかった。


「やっぱり予想通りかも…………凪。六花。このまま階に行こう」


「「分かった!」」


 手に入れたモンスターカードに喜ぶ間もなく、僕達は三層に移動した。


 四階に向かいながらゴブリンとゴブリンアーチャーを倒したが、モンスターカードはドロップしなかった。


 そして、僕達は初めての四階にたどり着いた。




 草原に佇んでいるゴブリンの群れを見つけた。


 全部で三体いる。


 一体は普通のゴブリン、一体は弓を持ったゴブリンアーチャー。そして、もう一体はゴブリンよりも大きな体を持った――――ゴブリンウォリアーだ。


「四階から難易度が跳ね上がるから気を付けて。ゴブリンウォリアーは非常に頑丈だから気を付けて」


「「分かった」」


 僕が走り抜けて、凪が同じ速度で隣を走る。


 僕達を捕捉したゴブリンたちが獲物を狩るかのように卑俗ひぞくな笑みを浮かべてやってくる。


 後ろから飛んできた光の槍がゴブリンウォリアーに直撃すると巨体が倒れ込む。


 凪がゴブリンに斬りつける間に、僕は後方にいるゴブリンアーチャーを目掛けて走り込む。


 飛んできた矢を振り払いながらゴブリンを一瞬で倒す凪の実力は、一人で二十階に到達した実力が頷ける。


 僕がゴブリンアーチャーを倒す頃には、妹の魔法でゴブリンウォリアーですら成す術なく倒れた。


「やっぱりな…………凪! 六花! 次の作戦でいこう!」


「「分かった!」」


 次の群れを見つけて、さっき同様に走り込む。


 後ろから飛んできた光の矢は――――ゴブリンウォリアではなく、ゴブリンを打ち抜いた。


 その隙にゴブリンアーチャーにとんでもない速度で近づいた凪によって、一瞬でゴブリンアーチャーが地に伏せた。


 そして、残るは僕の前に佇むゴブリンウォリアーだ。


 ゴブリンは僕と同じくらいの身長なので、あまり違和感なく戦えたが、目の前のゴブリンウォリアーはそれよりも大きく五割増しにしたくらいの大きさだ。


 もちろん全身を覆う筋肉が力強さを感じずにはいられない。


 武器を持たないゴブリンウォリアーが右手で殴り掛かる。


 ゴブリンたちとの戦いで慣れて来たのもあって、間合いを確認しながら後方に下がって避ける。


 強烈な一撃が地面を叩いて周囲に大きな音を鳴り響かせた。


 すぐに降ろされた右腕を斬りつけて傷を増やしていく。


 相手の攻撃を懸命に見極めながら避けつつ傷を増やしていくと、どんどん動きが遅くなり足に傷を増やしてゴブリンウォリアーが僕の前に両膝を付いた。


 既に両腕も動けなくなったゴブリンウォリアーの首を跳ねた。


 そして――――――




「またモンスターカードだ~!」




 足早にやってきた妹が嬉しそうに声をあげる。


 人生四枚となるモンスターカードにゆっくりと手を伸ばした。



 ――【スキル『カード』から生まれたカードには特典が付与されます。以下の特典から選んでください】



 予想通り、スキル『カード』が発動して特典が付与される。


 僕は迷うことなく、特典を選んだ。


「さて~! 検証も終わったし、いつもの黒猫で食事にしようか~!」


「反対~!」


「え!?」


「検証の事も聞きたいから、私達が料理を作るわよ」


「そ、そっか」


 喫茶店『黒猫』の食事も美味しいのだが、二人が作ってくれる料理も美味しいから僕としてはどちらも大歓迎だ。




 ダンジョンを後にして、魔石を売り、その足で食材を買いこんで家に戻ってきた。


 二人はすぐに料理に取り掛かってくれて、すぐに美味しそうな料理がテーブルに並んだ。


「にぃ~早く検証の結果を教えてよ~」


 リスみたいにご飯を口いっぱいにもぐもぐしていた妹がしびれを切らしたかのように、今日までおこなっていた検証結果をせがんできた。


「そうだな。まずスキル『カード』は特典をもらえる力があると話したよね? 検証結果からして、スキル『カード』の特典が発動するのは、モンスターカードに獲得した時ではなく、あくまでスキル『カード』が発動してドロップしたモンスターカードだけだという事が分かったよ」


「スキル『カード』が発動してドロップ?」


「ああ。その条件は――――――僕が初めて倒した魔物に発動するみたいだ。ゴブリンもゴブリンアーチャーもゴブリンウォリアーも、どれも初めて倒した個体だけがモンスターカードをドロップした上に特典が貰えたんだ」


 二人は納得したかのように頷く。


 僕はさらに続けた。


「最初のゴブリンカードに、僕のスキル『アップグレード』を与えたのを覚えているよね? ゴブリンアーチャーのモンスターカードは実は――――――カード化ではなく確率上昇に使ったんだ」


「「確率上昇!?」」


 そう。


 実はゴブリンアーチャーを獲得した時、二枚に増やす選択肢とゴブリンカード同様にアップグレード品にする選択肢があったのだが、そこで検証のためにドロップ確率を上昇させてみた。


 一枚ごとにドロップ確率が0.1%上昇するので、約千体倒せば一枚落ちる計算になる。


 だからこそ、二階で二日掛けて千体近くのゴブリンを倒しまくった。


 これは殆ど二人の実力がないとできなかったけど……。


 と、そこで通常ドロップさせたモンスターカードにはスキル『カード』が発動せず、特典を得られなかったのだ。


 だからこそ、僕はゴブリンウォリアーカードを二度目のドロップ確率上昇に使った。


 前回ドロップ確率上昇の際に知った大きな情報がある。




 それは、普段のモンスターカードのドロップ確率は――――――なんと、0.001%だそうだ。


 ――【スキル『カード』の特典により、ゴブリンアーチャーカードを使用し、ノーマルモンスターカードドロップ確率を0.001%から0.1%に上昇させました。】


 これが初めてドロップ確率を上昇させた時のアナウンスだ。






――――【お願い】――――

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