第20話 斬る
三階に向かう前に二階を通り抜ける間、スキルの検証のためにゴブリンを倒しながら進めていく。
そして、僕が獲得した新しいスキルのとんでもない効果が発覚した。
「それで……魔石を…………」
「にぃが……魔石採取を……」
二人は脱帽して二人でその場にうずくまった。
二人が驚くのも無理はない。そもそも僕自身も驚いている。
昨日は確認できなかったけど、新しいスキル『魔石採取ノ極』の本当の力は魔石を格納する力ではなく、採取する力だ。
倒したゴブリンに触れることなく、中にある魔石を直接『魔石倉庫』で採取する事ができた。
つまり、いままでのようにゴブリンを切り開いて採取しなくても、触れることすら必要なく僕の半径五メートルの範囲にさえいれば採取できる。
心なしか、二人の瞳に光がないまま、二階を通り抜けて三階にたどり着いた。
三階も風景は変わらない。
そして、草原に佇んでいるのは、一階や二階にいるゴブリンだ。
ただし持っている武器が違う。
三体いるゴブリンのうち、前に立つ二体は従来の棍棒を持っているのだが、後ろの一体は棍棒ではなく、弓を持っている。
「ゴブリンアーチャーは気を付けてね。矢に毒が塗られているから、掠っただけでダメージがあるよ」
「もし毒になっても私の浄化ならすぐに回復できるからね! 任せておいて~!」
浄化の万能さって凄いな……。
僕が知る範囲では、毒消しポーションを持ち歩くと聞いているから。
「六花。援護を頼む」
「任せといて!」
一度深呼吸をして、三体のゴブリンに向かって走り抜ける。
こちらに気づいたゴブリンたちが威嚇して走ってくる。
後ろには弓の弦を引くアーチャー。
宙を切り裂く音が前方から響いて来て、僕を狙う矢が凄まじい速度で飛んでくる。
全力で横に飛ぶと僕が立っていた場所を通り抜ける矢。
それとタイミングを同じくして、今度は後ろから光の槍が飛んでいく。
アーチャーを狙った光の槍だが、前方のゴブリンに防がれてゴブリンが倒れる。
その隙に僕も全力疾走で後方のアーチャーに向かう。
僕を狙う殺気が空気を通して伝わってくる。
鍛冶師のマスターから、剣は道具ではなく自分の手と足と同じで相棒だと教わった。
全神経を右手に持った剣に集中させる。
――――――来るっ!
肌に触れる殺気が目の前から飛んできた矢を感じさせてくれる。
右手に持った剣を振り上げる。
カーンと甲高い音が鳴り響いて、僕の剣によって防がれた矢が宙を舞う。
振り上げた右手の剣をそのまま後ろに向けたまま全力で走り抜ける。
僕の前を塞ごうとするゴブリンに後ろから飛んできた光の槍が刺さる。
それと同時にゴブリンが倒れる前にその体を前に弾くと、緑色の体に矢が刺さる。
そして、やっと間合いに入ったゴブリンアーチャーに向かって剣を斬りつけながら通り抜ける。
マスターが話していた「俺様が作った剣がこんな風に刃こぼれするなんざ、どうせ力に任せてただ振り回しているだけだろが!」という言葉を何度も考えた。
僕のイメージでは剣の刃の部分で相手を
でもマスターはそれではダメだと言っていた事から、ずっと悩んでいた時、六花が料理中に肉を斬る際に上から下に流れるように斬っていた。
つまり、僕がやっていたのはただ力に任せて鋭利な刃で叩きつけていて、斬るのではなく殴ることになっていた事に気づいた。
以前凪に教わった時に剣を流れるように斬ってと言われたはずなのに、実戦ではそれが上手くいかなかった。
でも今なら分かる。
剣というのは、力で斬るのではなく、流れるように斬るモノだ。
僕が持つ鋭い剣がゴブリンアーチャーの口筋を美しい帆を描いて
決して流れに逆らわずに、剣を振り回す速度と重さに任せて力を抜いて回す。
経験値獲得のアナウンスが聞こえて、ゴブリンアーチャーを倒した事を確認する。
ゆっくりと立ち上がり、後ろを振り向いたそこにあったのは――――――不思議な光で輝かせているモンスターカードがあった。
「モンスターカード!?」
「にぃ! またモンスターカードが出たよ?」
「こんな短期間に二枚目は凄いわね」
ドロップするとは思わず、光り輝くモンスターカードに呆気に取られる。
「にぃ。手に取ったら?」
「あ、ああ。そうだな。ありがとう」
妹に背中を押してもらって、モンスターカードに手を掛ける。
――【スキル『カード』から生まれたカードには特典が付与されます。以下の特典から選んでください】
また!?
いや、またというより、もしかしたら…………必然だったかも知れない。
「どうかしたの?」
「またスキル『カード』が発動したんだ」
「ほえ~それってモンスターカードを手に入れたら毎回発動するのかな?」
「いや、そういう訳ではない気がする。もしかしたら、僕の予想が当たるなら――――――」
僕は検証を兼ねて、とある特典を選んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます