第16話 努力の結晶
「あれ? 剣が…………」
今日もゴブリンを倒し続けているが、モンスターカードは一向にドロップせず、六花と凪が光を失った目でゴブリンの魔石を採取していた。
少し斬りにくくなったなと思って、ゴブリンを倒して握った剣を見ると刃がボロボロになっていた。
「凪~刃がボロボロになったんだけど、どうしたらいいかな?」
「モウソンナニヒガタッタンダネ……」
どうやら魔石採取は僕が思っていたよりもずっとずっと難しい仕事のようだ。
「今日は狩れなさそうだから、上がろうか? でもまだ時間があるな…………もしよかったら二人でゴブリンを倒さない? 僕も久しぶりに魔石採取がしたくなってきたよ」
「「やる!」」
間髪入れずに返事をした二人は浄化で体を清めると、意気揚々とゴブリンたちに向かって歩き始めた。
「うふふふふ。今までよくも毎日私を苦しめてくれたわね…………」
「えへへ……ゴブリン……倒す……えへへ……」
二人の天使が天使とは思えないほどに獲物を狙う鬼のような形相で歩いていく。
旗から見たらただただ怖い。
久しぶりだが、二人が残したゴブリンの魔石を採取する。
意外な事に久しぶりなのに以前よりも作業が楽で採取がすぐに終わった。
恐らくレベルが十二になったおかげでステータスが上がって、採取がより楽になったと思われる。
それにゴブリンを相手するのもかなり慣れてきたしな。
魔石を急いで取り出して二人の姿を追う。
…………。
見なかった事にしよう。
いつもよりも傷が多いゴブリンの亡骸の中から魔石を取り出す。
しっかりと魔石は傷つけずに残す当たり、余程魔石に恨みがこもっているようだな。
最近僕が倒していたのもあって、魔石の量が少なかったのだが、今日は二人が頑張ってくれて魔石がいつもよりも遥かに多い。
パーティー初めての狩りの時は、凪が頑張ってくれて百を超える魔石があったら、今日はそれよりも多い。
戦いに六花が混ざるようになったからだ。
六花は光魔法の一種であるスキル『ライトスピア』という魔法で次々ゴブリンたちを殲滅していた。
その速度は凪を上回る程で、遠距離からポイポイ撃って倒せる妹の姿が頼もしいとさえ思えた。
もちろんモンスターカードはドロップしなかった。
今日も喫茶店『黒猫』で紅茶と食事を進める。
「ケントくんの剣、刃こぼれしているんだっけ」
「ああ。ボロボロになってもう使いにくくなってしまったよ。もはや鈍器のように感じる」
「ふふっ。それくらい頑張ってたものね。そろそろお金も貯まっている頃だし、ワンランク上の武器を買って次の階に進んでも良さそうね」
「そうだな。たまたまドロップしたモンスターカードにしがみつくよりは、先に進んでより強くなった方が良さそうだな」
隣でリスのように口をもぐもぐさせながらパスタを食べていた妹が、飲み込んだあと、小さくニヤリと笑う。
絶対にカードスラッシュの事を考えているな?
まぁ、ゴブリンでは物足りないと思うようにまで成長できたので、次の二層が楽しみでもある。
食事を終えて、凪の紹介でそのまま武器屋に向かう事になった。
喫茶店『黒猫』から表通りに戻り、華やかな道をさらに進んで行く。
できれば妹の服を先に買いたいと思っているけど、それで武器が買えなかったりしたら元も子もない。
まずは自分が戦うための力が先決だ。
表通りからまたもや裏通りに進む。
裏通りの脇にはガラの悪い連中が鋭い視線を僕達を舐めるように睨んでくる。
それに動じる事なく進む凪が頼もしいとさえ思える。
刺さるような視線を潜り抜けてたどり着いたのは、ぼろい店の前だった。
入口には剣と盾のマークが書かれていて、その他に目立った標識はない。
凪と共に中に入ると、中には大きな男たちが並んでいる武器を見ていたが、入ってきた凪と僕達を睨むように見つめた。
こうもガラの悪い場所に来れるなんて、探索者って凄いんだな…………。
「久しぶりだな。赤いの」
背の低いカウンターの奥に片足を膝に乗せて腕を組んだ大男が凪に声を掛ける。
「久しぶりマスター」
「おう。もう刃こぼれしたのか?」
「ううん。以前貰っていった鉄の剣がダメになったの」
そして右手で僕を示すように手を広げると、マスターと呼ばれた大男の凄まじい眼光が僕に向いた。
「ふむ…………赤いの。悪いがこいつではお前さんの仲間には務まらんぞ」
「!?」
「あはは……マスターは厳しいね。でもケントくんってものすごいんだよ?」
「小僧。剣を見せてみな」
「は、はい!」
勢いに呑まれて腰に差していた剣を抜いて大男に渡す。
刃がボロボロになった剣を見た大男は――――――
「がーはははは! こりゃたまげた! 赤いの。悪いが――――――こんな
「っ!?」
「小僧。お前に剣を握る資格はねぇ」
「ま、待ってください! どうしてですか!」
僕自身が凪のパーティーメンバーとしてふさわしくないのは知っている。
ここ最近は僕のせいで一階から全く進めていない。
だからこそ、僕は大男に食って掛かった。
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