第15話 カードスラッシュ

 次の日。


 僕達はまたダンジョンの一階にやってきた。


 昨日に引き続き狩りを開始する。


 まずスキル『カード』の最初の検証だ。


 僕が最初にゴブリンを倒した時間から丁度二十四時間が経過したのを確認する。


 確認を終えて、二人が見守る中、二日目の狩りがスタートした。


 最初の三体のゴブリンを倒した結果として、スキル『カード』は二十四時間に一度発動するスキルではなかった。


 パッシブスキルの中でも、一日一度だけ発動するスキルがある。


 代表的な例に、才能『盾聖』と呼ばれている最高峰の才能が持つスキル『起死回生』は、一度瀕死状態に陥った際発動して全回復するスキルとして有名だ。


 最初のゴブリンでドロップしたのは単なる偶然だった可能性もあるけど、モンスターカードのドロップ率を考えれば、それこそ都市伝説級の確率だと思うんだけどな……。


 妹と凪が魔石採取をしてくれている間に、ゴブリンを倒していく。


 一撃で倒しても発動せず、色々な可能性を試した結果、何も発動しなかった。


 そして、その日も狩りが終わり、魔石採取も慣れて来たけど、大変なのもあり、今日も喫茶店『黒猫』で食事を済ませる。


 そんな日々が経過し、月曜日から水曜日の学校の授業を受けて日々を繰り返した。




 ◆




 ――【レベルが9から10に上昇しました。】


 ――【新しいスキル『カードスラッシュ』を獲得しました。】



「「上がった~!」」


 ゴブリンを倒してアナウンスが頭に響いて、魔石採取していた妹と一緒にガッツポーズをした。


 少し離れていてもこういう所はリンクするんだな。


 今回獲得したスキルは『カードスラッシュ』というアクティブスキルだ。


 早速詳細を確認する。



---------------------

 『カードスラッシュ』

 カードホルダーに保管しているカードの枚数に応じて威力が上昇する攻撃スキル。使用魔素1。

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 おおお!


 軍蔵がよく使っていたように、スキルを獲得しただけで常時発動しているだけのパッシブスキルとは違い、アクティブスキルは魔素を使って発動させて高い効果を生み出すスキルだ。


 妹の魔法と呼ばれている系統のスキルもそうだが、剣を持って戦う系の才能もアクティブスキルを使う事ができて、それによって大きく戦術が変わってくるのだ。


 それくらい高い効果を持つ攻撃スキルをようやく手に入れた。のはいいんだが、説明をよくよく読むとカードホルダーにカードを保管している数に応じて威力が上がると書かれている。


 まさか、一枚も入ってないと威力なしとかではないよな……?


 嬉しそうに小走りで走ってきた妹と凪が見上げてくる。


「にぃ? どんなスキルだった?」


「初めてのアクティブスキルだったよ! しかも攻撃スキル! 魔素が1しかないから一撃しか撃てないけど、攻撃力次第では良い感じで戦いに使えそうかな?」


「わあ! 見たい見たい!」


 口にはしないが凪も見たいようで、目を光らせて僕に送ってくる。


 僕自身も初めてのアクティブスキルにワクワクして早く見たい。


 近くのゴブリンを見つけて、人生初めてのアクティブスキルを使う。


 アクティブスキルを使う際には「スキル『スキル名』」を唱える必要がある。


 スキルを使おうとするとき、何となく距離が分かると噂には聞いていたのだが、それが不思議と届きそうな距離が分かってしまう。


 ゴブリンの群れに近づいて、ここだと思ったタイミングで「スキル、カードスラッシュ!」と唱える。


 すると不思議な事に両手に持っていた剣に体内からエネルギーのようなモノは吸われるのを感じて、剣は赤と黄の不思議な光に包まれる。


 そして、体が流れるように動き、両手に持つ光る剣を右上から左下に振る。


 眩い光の波動がゴブリンに飛んでいき、鋭い音を響かせながらゴブリン一体に直撃した。


 …………。


 …………。


「やっぱりカードがないとダメージないのかよ!」


 当たったゴブリンは怪しい笑みを浮かべて止まることなく、勢いよく襲って来た。


 残念な思いが溢れてくるなか、襲ってくるゴブリンを次々斬りつける。


 最近はゴブリンとの戦いも慣れて来て、攻撃を避けながら効率よく攻撃をする。


 凪曰く、攻撃力が足りない場合、武器が皮膚を貫通する事がなく、ダメージが十分の一以下になるために倒すのは困難だという。


 スキル『アップグレード』のおかげでゴブリンに攻撃が通るようになり、一撃で倒せるのはありがたい。


 次々急所を攻撃してゴブリンを倒していく。


 三体を倒したあと、何もなかったかのように遠い目をした妹がゴブリンの魔石採取を始める。


 …………もうちょっとカッコイイ兄になれなくてごめんな。

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