第13話 特典の検証

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【2022/12/22メンテナンスのお知らせ】

『オークカード』を力+10から力+5に下方修正しました。

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 僕の『カードホルダー』の中の『ゴブリンカード』を確認する。


 選択肢の内容から『アップグレード』を付与するという内容。


 その言葉通り、僕の中にある新しい『ゴブリンカード』は、その名前を変えて――――『ゴブリンカード(+)』と表記されていた。


 ここで一つ注目したのは、選択肢の①と②の違い。『アップグレード品』にするのと『アップグレード』を与える・・・という事だ。


 そこで、装着していた『ゴブリンカード』と新しく獲得した『ゴブリンカード(+)』を入れ替えてみると、元々の『ゴブリンカード』はそのままカードホルダーの中に入り、『ゴブリンカード(+)』は『ゴブリンカード+』と表記され、アップグレードされた内容のままだった。


 一度元の状態に戻し、『ゴブリンカード(+)』を取り出す。


 なんの変哲もない普通のモンスターカードで、代り映えもなく、両面にゴブリンが描かれていて、その下に『ゴブリンカード(+)』と書かれていた。


「ん? 名前が違うわね?」


「やっぱりそうか? 凪ってこういう名前は見た事ないのか?」


「うん。初めてみるし、聞いたこともないわね。モンスターカードは探索者に取って最も貴重なアイテムであり、装備だから、こういうモノは全て調べているはずなんだけど…………」


 凪は実力を兼ね備えた探索者の一人だ。


 探索者は何よりも情報を大事にする。


 ダンジョンでは人類最大敵であるが常に隣り合わせだ。


 だからこそ、ダンジョンの情報だけでなく、探索者としての情報を常に集めていなければ、待っているのは死だけとなるだろう。


 凪は以前フロアボスを倒せなかったと言った。


 ということは、挑戦して勝てなかったから逃げられたということだ。


 事前準備から逃げて生き延びたという事実が、彼女が普段から情報を大切にして決して無理をしない戦い方をする証拠だ。


 そんな凪でさえも分からない情報なら、とても珍しい事なのは間違いない。


「六花。こちらのカードをカードホルダーに入れて見てくれないか?」


「は~い」


 六花がカードを自分の中に入れたのを確認して、今度は僕が持っていた『ゴブリンカード』を一枚取り出して、さらに渡した。


「一枚目と二枚目の表記はどうなっている?」


「えっと~一枚目は見た文字通りプラスの括弧かっこ書きになっていて、二枚目は普通にゴブリンカードとしか書かれていないよ?」


「じゃあ、どちらも装着してくれる?」


 大きく頷いた妹が自分の『ステータス』を操作し始める。


 隣で見守る凪もワクワクするかのように目を光らせて一緒に六花に注目する。


「えっとね。装着したら、一枚目はゴブリンカードの隣にプラスマークがついて、二枚目はただのゴブリンカードになってる!」


「プラスマーク……」


「六花。ステータスのカードで上昇した分を教えてくれる?」


「ステータスは――――力と器用が11ずつ上がってる~」


「それって、ケントくんが話していた『アップグレード』した場合の数字と同じだ!」


「ああ。凪の言う通り、僕が最初から持っていたスキル『カード』は、恐らく獲得したカードに特典を付与する事ができて、僕しか使えないと思われた『アップグレード』をカードに与える事で、僕以外の人にも恩恵を与える事ができるかも」


 ①と②の文言の違いを予測しながら、検証のために②を選んだのは大正解だったという事だ。


 もし①を選んでいたら『固定』という言葉からカードホルダーから取り出せなくなった可能性がある。


 それがどういう意味を持つのかは分からないけれど、②を選んだらより性能が上がったカードを味方にも上げられる事が判明した。


 六花が二枚のカードを出したので、ただのゴブリンカードはもらい受けて再度装着して、『アップグレード』が付与されたカードはそのまま六花に装着してもらった。


「わあ! なんだか力が強くなった気がする!」


「六花ちゃんは魔法職だから力の成長が低いから10が上がる恩恵はとても大きいと思う。ゴブリンよりも効果が高いオークのカードでさえ、一枚で力が5しか上がらないからね。一枚で力だけでなく器用まで10上がるのは、フロアボス並みの高い効果だよ」


「そんなに凄いんだ! うちのにぃが凄く凄いね~!」


 凄いという言葉を沢山並べる妹に笑みがこぼれてしまった。


「ケントくん。もしかしたらケントくんがモンスターカードを出す事ができれば特典を与えられるかも検証したいね」


「ああ。それも検証したい。これから暫くゴブリンを狩り続ける事になりそうだがいいか?」


「うん。それもこの先、検証していきたいと思っているよ」


「じゃあ、魔石の採取は私と六花ちゃんで頑張るね」


「えっ!?」


「ただ見守っているよりは、私達もそうした方が収入にも繋がるからね。六花ちゃんもそれでいいかな?」


「もちろん! 私も魔石採取してみたい!」


 二人の厚意で暫くゴブリンを狩る事が決まった。

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