第12話 スキル『カード』発動
「にぃ!? 怪我は大丈夫?」
問答無用に僕にスキル『ヒーリング』を使う妹に苦笑いしながら、僕は勝利をかみしめる。
「今日初めて戦う動きじゃなかったよ! 凄いわ!」
「ありがとう。これも凪が色々教えてくれたおかげだよ。本当にありがとう」
「ふふっ。それをすぐに実践できるなんて凄いと思う。でも油断はダメだからね?」
「もちろん。僕もそこまで馬鹿ではないよ。それにまた怪我すると、六花の力を使う羽目になっちゃうからな」
感謝しつつ妹の頭を優しく撫でてあげる。
「あれ!? け、ケントくん! あれ!」
「ん?」
驚いている凪が指差す場所には――――空中に浮遊している手のひらサイズの、不思議な光を発しているモンスターカードが見えた。
モンスターカードがドロップした際に空中に浮かぶと聞いている。
一度でも手に取った場合、モンスターカードは浮遊しないただのカードになる。
だからこそ、空中に浮いているカードを手にする機会はそう多くないのだ。
さらに、それに触れる資格があるのは、その魔物を倒すまでもっとも貢献した者のみが触れる資格があるので、奪われる心配もない。
まぁ、手に取った瞬間に斬られる場合もあるらしいけど、最近は探索者のルールもより細かく決まったので、それを狙う人はいない。
探索者ギルドが禁止にしており、それを行った人は探索者ギルドから報復を受ける事となる。
つまり、国から追われる事になるのだ。
それにしても一年以上ゴブリンを倒し続けていた軍蔵たちが一度も手に入れる事ができなかったモンスターカードが、まさか初めて倒したゴブリンからドロップするとは思いもしなかった。
「きっとケントくんが今まで頑張ってくれた神様からの贈り物だと思うよ」
凪の言葉が心に刺さる。
それはとても嬉しくて、胸の中に何か熱いモノを感じる。
光るモンスターカードの両隣に妹と凪が立つ。
美しい光を浴びて、二人が本物の天使に見える。
ゆっくりと近づいて、モンスターカードに手を伸ばした。
右手にカードの感触があった。
その時、
――【スキル『カード』から生まれたカードには特典が付与されます。以下の特典から選んでください】
頭の中にアナウンスが流れる。
スキル『カード』から生まれたカード?
特典?
---------------------
①対象のカードを固定にして『アップグレード品』とする。
②対象のカードに『アップグレード』を付与する。
③対象のカードを複製する。
④対象のカードを消去してカードが持つレア度のドロップ率を上昇させる(一枚で0.1%上昇し限界値3%)
⑤特典を破棄する
---------------------
続いて僕の前に五つの選択肢が映った画面が現れた。
どうやら妹達には見えてない様子。
せっかくの特典ならひとまず⑤は選択肢から除去して、残り四つの中から選ぼう。
単純に考えれば、③の複製がもっとも効果的だと思われる。
文面からモンスターカードをもう一枚手に入れる事ができるという事だからだ。
しかし、①と②の選択肢もよくよく考えてみる。
どちらも『アップグレード』に関するモノだが、①はカードを固定にすると書かれている。
この固定というのは、僕自身の中から
つまり、装着するか、カードホルダーの中に入れるかの二択しか選べられないという。
どの道、装着すると『アップグレード』が発動する以上、俺がアップグレード品を持つ意味は全くないのに、どうしてこういう選択肢があるのか。
によって、①がなくなった。
残り②から④。
特典の事を考えれば――――僕的には③もない。
何故なら、このカードがゴブリンカードであるから。
昨日の収入を考えた場合、ゴブリンカードを複製してもあまり得にはならないと思う。
となると、②と④。
④の特典は実は初めて聞く内容だ。
カードのドロップ率が上げられるのは、非常に魅力的だが、その数値があまりにも低い。
しかし、ドロップ率は対象のカードではなく、対象と同じレア度と書かれている。
「凪? モンスターカードってレア度が存在するのか?」
「レア度? あるよ。こういう場所にいる魔物は『ノーマル』、時々現れる強い魔物――――上位種と呼ばれている種が『レア』、フロアのボスを『スペシャル』と呼ぶんでいるよ。その上もあるという噂があるけど、どこにも情報がないので、信ぴょう性は殆どないわね」
なるほど…………つまり、この中でも最も効果があるのは『ノーマル』のレア度を最大に上げる事か。
例えば『ノーマル』を三%にすれば、ゴブリンを三十四体倒せば一枚獲得できることになる。
凪程にはいかなくても、毎日三十四体倒せば、毎日モンスターカードが手に入る。
しかも、ゴブリンじゃなくても通常魔物でも手に入るなら、圧倒的に④という選択肢が効率がいい。
「どうかしたの?」
「えっと、僕のスキルで手に入れたモンスターカードに特典が付与されるみたいでな。ひとまず、検証も兼ねて――――――」
僕は②を選んだ。
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