第3話 特典交換
「お待たせしました」
意外にもたった数分で終わったようで、端末を取り出してリストを見せてくれた。
受付嬢が端末を見せるために前に出した両手から、香水の甘い香りがする。
「カード系の才能に合いそうな特典はこちらがおすすめでしょうか」
リストを眺める。
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『オークカード』×1
力+5
『ゴブリンカード』×5
力+1、器用+1
『リザードマンの短剣』×1
攻撃力+40
『翡翠の弓』×1
攻撃力+35、矢速度上昇
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早いと思ったら四つか。
ただ気になるのは、そのどれもが武器系列だ。
「お客様は武器を持っていなさそうだったので、初心者でも扱いやすい武器二つと、カード系という事で、現状交換できる攻撃力に関するカードを二種類をピックアップさせていただきました」
「おお……」
「おすすめはオークカードではありますが、もし探索者を目指していて武器がないのなら短剣がおすすめですかね」
受付嬢の言う事も最もだ。
しかし、カードを獲得できるチャンスはほぼほぼない。
買取ポイントが貯まったらカードに交換できたらいいなと思っていたから、実際目の前にそれがあるなら取ってもいいかも知れない。
そもそもゴブリンカード一枚でも十万はするのに、それが五枚セットで貰えるのは非常に大きい。
一年間も軍蔵の元で魔石採取とパシリを続けた結果だと思うと嬉しい。
「ゴブリンカード五枚でお願いします」
「オークでなくてもいいのですか!?」
「はい」
受付嬢はそれ以上何も言わず、端末を操作して最後にポイントを使うというページを見せてサインをするように言ってくれた。
端末に指で自分の名前を書いて承認ボタンをタッチする。
少し待っていると、奥からトレーに手のひらサイズのカードが五枚並んでいる。
「こちらがゴブリンカード五枚になります。既に知っているとは思いますが、初めての1,000ポイントのみ十倍の効果ですので、次からは十倍のポイントを貯めないと交換できませんので気を付けてくださいね?」
「…………えっ?」
「えっ?」
受付嬢と目が合う。
うわああああああ! それを早く言ってくれよ!
それならオークカードにしたのにいいいいい!
しかし一度契約を結んだ以上、返却は不可能だ。
目の前に光り輝くゴブリンカード五枚を震える手で受け取る。
「だ、大丈夫です。次は正規ルートで購入します」
「頑張ってください。カードの装着の仕方は分かりますか?」
「胸に当てるんでしたっけ」
「ええ。カードは高価ですので、あまり持ち歩かず、装着するか、『ステータス』にございます『カードホルダー』に入れておくことをおすすめします」
『カードホルダー』というのは、モンスターカード専用のアイテムボックスのようなモノで、世の中にはアイテムボックスのスキルを持つ人もいるらしいけど、カードホルダーは全員が持っている。
計百枚まで入れられるので、保管場所としては最高に安全だ。
受け取ったゴブリンカード五枚を胸元に持っていくと、不思議な光を灯して僕の体の中に入ってきた。
体に当たる感覚は全くないけれど、自分の中に力が湧いてくる感覚と、体の中にカードが五枚存在する感覚が伝わってくる。
「ありがとうございました」
受付嬢に挨拶をして、買取センターを後にした。
ダンジョン前にある休憩スペースに座り込んで、自分の中の『ステータス』を覗く。
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名前:田中栞人
才能:カードコレクター
レベル:1
魔素 :1
力 :1+5
器用 :1+5
素早さ:1
魔力 :0
武器 :なし
防具 :なし
装飾品:なし
カード:ゴブリン
カード:ゴブリン
カード:ゴブリン
カード:ゴブリン
カード:ゴブリン
アクティブスキル:なし
パッシブスキル:
『カード』
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目の前に触れられないパネルが現れて、内容が読める。
ただ、これは自分にしか見えないので、他人に盗み見される心配はないし、他人のパネルを覗く事もできない。
自分のステータスに注目する。
『カード』というスキルがどういう効果を持つのか分からず、色々想像して装着したカードの効果が倍増するか、装着分だけ効果が上がるかと期待していたけど…………スキルが反応している感じが全くしない。
これならオークカードを選ぶべきだったんだろうけど、検証も兼ねてゴブリンカード複数枚を選んだのだから、後悔しても仕方がない。
一つ嬉しいのは、カードを獲得したおかげで力が1から6に上昇しているだけあって、少し強くなった気がする。
できれば最弱魔物ゴブリンを倒せるようになりたいが、群れるので狩るのも大変だ。
パーティーを組めたり、軍蔵のように強ければいいのだが、このままでは難しい。
どうしたらいいか考え込んでいると、周囲から大きな歓声が上がる。
みんなが見つめている視線の先を見つめると、腰まで届くような美しい銀髪をなびかせた美少女がダンジョンに向かって歩いていた。
腰に下げられている二振りの剣とオーラだけでも彼女が強力な探索者なのが分かる。
銀髪と双剣。
それだけで有名な彼女の事を知らない探索者はいない。
――――孤高の双剣銀姫。
パーティーを組まず、ずっと一人で探索を続けている美少女探索者だ。
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