第8話 チョロい幼馴染

「アルフォンス……これからどーするの?」

「とりあえず、馬を手に入れましょう」


俺は王宮の馬小屋へ向かった。

幸い、厩番は俺たち平民の味方だ。

金をやれば抱き込めるだろう。


聖女様を抱きかかえたまま、俺は必死で走った。

王宮の裏口から出て、馬小屋に到着すると、


「アルフォンス!こっちよ!」


サーシャの声がした。


「お前、なんでここにいるんだよ?」

「聞いたわよ。近衛隊長の腕を切り落としたって……だから馬車を用意しておいたの」


2頭の馬が繋がれた小さな箱馬車だ。

黒い塗装がされているから目立たないだろう。


「いいのか?公爵令嬢の侍女が逃亡の手助けして」

「……あたしも、一緒に行きたい」

「はあ?無理だ」

「もう公爵令嬢の侍女は嫌なの。エレオノール様は意地悪だし、お給金は安いし、もうやめたいのよ」


噂で聞いたが、エレオノール様は使用人に対するパワハラがすごいらしい。

退職する使用人が後を絶たないとか。


「危険だぞ。捕まればお前も死刑だ」

「いいの。アルフォンスと一緒なら」

「……そうか。お前がそれでいいなら一緒に行こう」


サーシャは、俺のことが好きだ。

俺はサーシャの好意に気づいていないフリをしている。

そのほうが好都合だからだ。

昔から俺は、サーシャの好意を利用して、便宜を図ってもらってきた。

今回は、いわば俺の意思をサーシャが忖度(そんたく)したことになる。

便利な幼馴染を持って、俺は幸せだな。


「さ、聖女様。早く馬車へ」

「サーシャさん。ありがとう。この恩は一生忘れません」

「ありがとな。サーシャ。助かった」


俺はサーシャの頭を撫でた。


「ふふ。そうでしょ?アルフォンスは幼馴染をもっと大切にしなさいね!」

「ああ。大切にする」


まったく、チョロい奴だぜ。

本人は認めなくても、サーシャは俺とヤリたいに違いない。だからわざとヤらないでおけば、俺のチン○を餌にして操れる。


俺たちは馬車に乗り込んだ。 

サーシャが御者をやってくれた。


「ふう……ちょっと狭いですね……」

「アルフォンス!怖かったよぉ!」


聖女様が俺に抱きついた。


「もう大丈夫ですよ。このまま王都から逃げましょう」

「ねえ……慰めて」

「ここで……ですか?」

「お願い。もう我慢できないの」


サーシャは御者をやっているから、箱馬車の外にいる。

声を出さなければバレないか。

ただ、聖女様はいつも喘ぎ声がすごいからなあ……


「声を出さないと、お約束できるなら」

「うん!約束する!」


あどけない少女のように、聖女様は微笑んだ。

かわいいな……


俺は聖女様にキスをした。

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