第6話 俺と一緒に逃げよう

糞サイコ女のリーリエなら、本当にバラす。

マジで逃げないとヤバいな……


俺は急いで聖女様の部屋へ向かった。


聖女様の部屋へ入ると、聖女様が荷造りをしていた。

そこら中に服やらトランクやらが散らばっている。

殿下に追放された聖女だから、侍女は誰も手伝っていなかった。


「聖女様……荷造りしてる暇はありません。今すぐ逃げましょう」

「……どうして?知らない隣国へ行くのです。しっかり準備しないと」

「私と聖女様の関係が、殿下にバレたのです」

「え?」


聖女様の顔から血の気が引いた。

正確にはまだバレてないが、時間の問題だろう。


「だから……アリア、今すぐ俺と逃げよう」

「そんな。どうして……?」


どうしてバレたかは、絶対に言えない。

元カノが、俺と変態セック○するためにバラしたなんてな。


「それはわからない。とにかくバレたんだ。早く逃げよう」

「……何か隠してるわね。真実を言って」

「本当にわからないんだ。いい子だから早く——」


バタン!


「アリア・ファルネーゼ!不義密通の罪で逮捕する!」


殿下の近衛兵たちが部屋に踏み込んできた。

もう来やがった。


「そこの騎士!お前も逮捕だ」


先頭の近衛隊長が俺を指差した。

近衛兵たちは全部で10人。

はあ……やるしかないか。

俺は剣を抜いた。


「貴様。抵抗する気か?」

「ご名答。抵抗する気満々よーん」


俺はヘラヘラ笑ってみせた。


「ふざけるな!抵抗すれば殺してもよいと、殿下から言われておる」

「ふーん……おっさん。あんた家族はいるのか?」

「何を言っている?」

「答えろ。大事なことだ。家族はいるのか?あんたが死んだら、悲しむ人はいるのか?」

「……私には家族がいる。妻と娘が1人」

「なら父親が仕事できなくなったら大変だな」

「なんだと——」


一瞬だ。

俺は余計な苦しみを与えない。


「ぎゃあああああああああああああ!」


おっさんの両腕がごろんと床に転がった。


「おいおい。騎士のくせに喚くなよ。みっともないぜ」


後ろにいた若い近衛兵たちが動揺している。

なんせご立派な近衛隊長が、芋虫みたいに床を這い回っているからな。


「どうした?お前ら?かかってこいよ」

「私が相手になろう」


ビビった近衛兵たちの奥から、王太子殿下の弟君、ロイ殿下が現れた。

王族専用の金ピカの鎧を着ている。

兄君と違って、かなり腕が立つらしい。


「兄上から婚約者を寝取った騎士は、お前か?」

「いかにも。寝取るのが俺の趣味でね」

「貴様……私がこの場で処刑する」



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