第5話 憎む相手と交わりたい

「あなたの処刑は見に行ってあげる。今から楽しみですわ」


リーリエのことだ。本当にバラすつもりだ。

どうせなら、いっそここで殺しちまうか。

今なら人がない。チャンスだ。


俺が剣の柄に手をかけると、


「つっー!」


リーリエが俺に抱きついて、キスをした。


「ううん……」

「おい、やめろ」


俺はリーリエを押し退けた。


「はあはあ……アルフォンス、ここでして」

「何言ってんだよ。外だぞ。見られたらどうする」

「だからいいんじゃない。早くして。お願い」


これも罠か?

しかしリーリエを見ると、ヤッてる時と同じ顔をしていた。

顔を紅潮させて、犬みたいな荒い息遣い。

本当にここでヤリたいようだ。


リーリエがスカートの中に手を入れて、下着を脱いだ。


「早く……あなたも」


俺は鎧をゆっくりと脱いだ……


◇◇◇


王宮の中庭で、俺とリーリエは寝た。

茂みの影に隠れて、声を押し殺して。

動物のようにお互いを求め合った。


「……あなたは猿ね。何回したら気が済むのかしら」

「それはこっちのセリフだ」

「相変わらず、令嬢に向かって失礼ね」

「平民だからな」


俺はリーリエの柔らかな尻を枕にした。


「したかっただけなら、別に脅さなくてもいいじゃないか」

「あなたのわたくしを憎む目、あれがたまらないの。憎む相手と交わるのが好きだから」

「変態だな」

「高尚な遊びと言ってほしいわね」


聖女様との清く正しい交わりもいいが、リーリエとの凝った趣向のやつも捨てがたいものがある。

リーリエは妖艶な笑みを浮かべた。


「わたくしの趣味に付き合ってくれるのは、あなただけ。あなたがいなくなったら、わたくしは一人で想像の世界で遊ぶしかなくなるの。だからどこに行かないで」

「殿下と遊べばいいだろ」

「……やっぱり、あの元聖女の平民が好きなのね」


俺の顔を撫で回した。


「俺は聖女様を愛してる」

「わたくしと寝たくせに……あなたこそ変態ね」

「俺と聖女様は心が通じ合っているんだ。だから俺がどんなに他の女と寝ても、愛は変わらない」

「クズ」


リーリエは立ち上がって、服を着始めた。


「わたくしの騎士になる気はないみたいね。何もかも殿下にバラすわね。牢獄で鎖に繋がれたあなたと、最後にしてあげるわ。楽しみだ」

「このサイコ女」

「褒め言葉と受け取りますわ。じゃ、ご立派な騎士様。ごきげんよう」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る