第4話 「あなたを養ってあげる」

「バカか?俺とヤってたこと殿下にバラしたら、お前だってヤバいだろ」


俺はやれやれと呆れた。


「アルフォンスに無理矢理犯されたって言うから」

「犯してねえし。殿下だってそんな嘘信じねえよ」

「どうでしょうねえ……夜はわたくしの言いなりですから。殿下」

「リーリエ……お前、本当にクズだな」


リーリエは夜がすごい。

性格は糞だが、そっちの上手さは元カレの俺が保証できる。

すげえ積極的で、どうやったら男を気持ちよくできるか、生まれつき心得ているみたいだ。

あの最中で寸止めされたら、男なら誰でも切なくて死にたくなるはずだ。リーリエが最後までしてくれるなら、何でも言うことを聞くに違いない。


「あなたのほうがクズじゃなくて?」

「お前よりマシだ」

「あの元聖女と寝てるでしょ?」

「はあ?寝てるわけないだろ」


おいおい。なぜバレた?

まさか、サーシャが俺を売ったのか……?


「その顔、やっぱり寝てるのね。しかも愛してる……あなたの元聖女を見る目で、すぐにわかりましてよ」

「……カマをかけたのか」

「元騎士団長のくせにマヌケね。そんなんだから左遷されるのよ。うふふ」


……俺はかつて、王宮の騎士団長だった。

平民から剣の腕ひとつで成り上がった。

騎士団長はモテた。白馬の王子様だ。

あの頃は、毎日かわいい令嬢と寝まくっていた。


だが、少々イキりすぎたせいで、令嬢にモテたくてたまらないアホ令息たちを嫉妬させた。

……クソッタレ。思い出しちまった。


「アルフォンス……よく聞きなさい。あなたはわたくしに勝てないの。大人しく、わたくしの騎士になりなさい。悪いようにはしない。わたくしが一生飼ってあげる」


リリーエは薄笑いを浮かべながら、俺の手を握った。


「俺はペットじゃねえ」

「ペットよ。これからわたくしには聖女の仕事があるの。わたくしを守って、癒やしてくれたらいいわ」


癒す、か……

リリーエの魂胆が見えてきた。


「……なるほどね。殿下じゃ満足できないってことか」

「少し違うわね。わたくしの仕事は殿下を満足させること。あなたの仕事はわたくしを満足させること。役割の問題よ」

「同じことだろ」

「全然違うわ。聖女は殿下の子どもを産むの。崇高な使命よ。でもあなたは、わたくしのただのはけ口よ」


聖女の仕事は激務だ。

毎日毎日、過酷な使命を果たさないといけない。

殿下の前で愚痴を言うわけにはいかない。常にいい子じゃないといけない。

殿下にぶちまけられない分、俺をストレスのはけ口にするつもりだ。

メンタルケアと、夜の相手をさせられる。

絶対に嫌だ。


「断る。俺はお前の肉便器じゃない」

「に、肉便器ですって!なんて下品な!いいわ。処刑は絶対に見に行ってやりますから」

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