第3話 元カノの脅迫

「アルフォンス!聖女様が追放されたって本当?」


幼馴染で公爵令嬢の侍女、サーシャが俺のところへやって来た。

さっき追放宣告されたばかりなのに、もう王宮中に噂が広まってるらしい。

聖女様の部屋の前で、俺たちはコソコソ話す。


「ああ。本当だよ。これで俺もクビだな」

「そんな……」


銀色のおさげ髪があどけないが、胸はリーリエに負けないくらい大きい。

目がくりくりしてかわいくて、幼さを感じさせる。


「アルフォンスはこれからどうするの?」

「そーだな。傭兵か、ヒモかな」

「ヒモって……冗談でしょ?」

「ジュリアちゃんが俺を養ってくれるってね」


ジュリアちゃんは、王都で一番の美少女娼婦だ。

貴族の太客がたくさんついてる。

そんなすごい子が、どういうわけか俺を養いたいと言っきた。

この最高のオファーを逃す手はない。


「ヒモなんてやめなよ。アルフォンスには似合わないから。それよりさ、あたしと一緒に魔道具屋さんをやらない?アルフォンスとなら上手くいくと思う」


サーシャは最近、魔道具作りにハマっているらしい。

昔から手先が器用で、編み物も料理も上手かった。

少しなら魔法も使えるから、魔道具作りはサーシャにピッタリだ。


「俺はパスするよ。お前と違って不器用だし」 

「力仕事もたくさんあるから」

「うーん……お前が養ってくれるならいいけど?」

「もう!アルフォンスのバカ!」


サーシャが俺の胸甲を叩いた。


「冗談だよ。まったり魔道具屋も悪くないな」

「本当?」

「考えとくよ」


サーシャとは辺境の村で子どもの頃から一緒だった。

気心が知れてるから、仕事もやりやすいだろう。

次の候補に入れておくか。

まあ、最有力候補はジュリアちゃんのヒモだが。


「さぁて……傷心の聖女様をお慰め差し上げるか」

「まだ昼間よ?キモいわ!」


俺と聖女様の関係を知っているのは、サーシャだけだ。

夜、聖女様の部屋に忍び込んだ時、見つかってしまった。

サーシャだったからよかった。他の奴なら王太子殿下にチクられて、俺は処刑されていただろう。


「アルフォンス」


背後から、意外な人物が話しかけてきた。


「そこにいたのね。話があるから、一緒に来て」 


……リリーエだ。


「リリーエ様。ご機嫌麗しゅう」


サーシャがお辞儀をした。


「早く来なさい!」


リリーエはサーシャを無視して、俺の腕を引っ張って行った。


◇◇◇


王宮の中庭。

赤い薔薇が咲き乱れて美しい。

俺は木陰に連れてこられた。


「アルフォンス。あたしの騎士になりなさい」

「リリーエ……それは無理だ」


リリーエと俺は短い間だが付き合っていた。

とにかくリリーエは束縛が激しかった。

俺が少しでも他の女と話そうものなら、ナイフで刺そうとしてきた。

束縛されるのは嫌いだ。だから別れた。


「あなたに断る権利があると思って?もしあたしの騎士にならないのなら、あたしとの関係を殿下にバラすわ」


マジかよ……


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