第2話 聖女様は追放される

朝、王太子殿下に聖女様は呼び出された。


聖女様と殿下は、一緒に朝食を取るのが慣習だが、最近の殿下は愛人と食べていた。

なのに、いったい何の用だろう?


俺は聖女様に付き添って、謁見の間へ向かった。


「おはよう!アリア!」


豪華な椅子に座った殿下は、聖女様に微笑んだ。

殿下は、外面はいい。

特に女には、優しくて紳士的だ。

まあ……裏では王宮のハーレムで、美女とヤリまくりなんだけどな。


「おはようございます。殿下……お隣の方は?」


俺は我が目を疑った。

殿下に隣にいる女——子爵令嬢のリリーエ・ダランベール。俺の元カノだ。

殿下の噂の愛人は、リリーエだったのか……


「おはようございます……アリア様」


リリーエはアリアに挨拶しながら、殿下の右腕に縋りついた。

頬を殿下の肩にハムスターのように擦りつけて、甘えてみせる。


「殿下ぁ……♡」

「ふふ。かわいいな。リリーエ」


煌びやかなブランドの髪と、丸くて大きな青い瞳。

小柄で小動物のような愛くるしさがある。

しかも、巨乳だ。 

深紅のドレスの胸元は大きく開き、たわわで大きい胸がわざと見えるようにしている。

……夜のほうは、クッソエロい。

殿下もハマってしまったか。

まあ、今でもたまにリリーエとはヤってるけどね。


「殿下!あーんしてください♡」


ブドウを一粒ちぎって、殿下に食べさせた。


「うん……うまい。ありがとう。リリーエ」


殿下はリリーエの頭を撫でた。


「ううん……殿下ぁぁ。愛してますぅ♡」

「私もだ」


2人はぎゅうと抱き合った。


「殿下……これはいったい何の冗談ですか?」


聖女様は拳を握り締めて、声を震わせた。

婚約者が愛人と目の前でイチャついているんだ。怒らないわけない。


「アリア。今日はそなたに大事な話がある」

「話……ですか?」  


聖女様は不安げな顔をした。


「アリア・ファルネーゼ。そなたとの婚約を破棄する!」


婚約破棄だと?

大昔から、王太子と聖女は結婚し、2人で手を取り合って国を治めていくことになっている。

……まさか、俺と聖女様の関係がバレたのか?


「……なぜですか。殿下」

「そなたは聖女にふさわしくない。ここ最近、そなたの作る結界が弱いせいで、辺境の民が魔物に襲われ命を落とした。それに、そなたは髪は黒いし目は赤いし、容姿も聖女らしくない。だからそなたとは結婚できない」


たしかに最近、聖女様の魔力は弱くなっている。

ただ、1日12時間も働かせられて、周囲の貴族から平民上がりと言われ無視され、王太子殿下には愛されず……こんな酷い環境で力を発揮しろと言われても、無理だ。


「しかし、でしたら誰が聖女の仕事を?」

「リーリエだ」


俺は耳を疑った。

あのヤリマンメンヘラのリリーエが、聖女だって?

絶対に有り得ない。


「うふふ。見てくださませ」


リリーエは、ドレスから胸をはだけ出した。

ぷるんと、大きなおっぱいが晒される。

本当に、胸だけはすごい。


「ここですわ!」


リリーエは自分の右胸を指差した。

聖女の証である「十字の聖痕」があった。


「そういうことだ。アリア。無能な聖女の君を追放する。聖女は国に1人だけが決まりだからな」

「うふふ。お可哀想なアリア様!」


こうして、聖女様は隣国へ追放されることになった。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る