忌まわしき記憶

歴史と権威に満ち溢れたカジュルヌス魔導学院の宝物館には

魔導の粋ともいうべき至高の魔具が厳かに保管されている


授業の一環でそれらの一部を拝観したことは幾度もあるし

それらが置かれているスペースは一般入場さえ許可されている場所であり

所詮は表に出して差し障りない物である事は誰もが理解できることだ

旺盛で貧欲なディアスの好奇心が満たされることはなかった


ディアスは立ち入りが禁止されている宝物館の深部までの探検を提案した

相も変わらず突飛な稀代の悪友の出来心に、相も変わらず僕もまた賛同した

雄図を描いてからの彼の行動力は見事なものだった

図書館でマナによる封印・結界学に関する分厚い本の幾つも貪り読んだ。

その姿を見てまた良からぬ事を考えているのではと教師陣も目を光らせていたのだが

数日間それが続くと元々好奇心の強さは知れ渡っていたためなのか感心さえされるようになっていった

そこからさらに数日後彼は満面な笑みと共に僕の元を訪れ

それらを理解し、また、解呪できる術を会得したと告げた。


校内を徘徊する人影もまばらになった頃

僕とディアスは両手に溢れんばかりの興奮と好奇

そしてそれらの感情に押しやられ零れ落ちる寸前の儚く拙い罪悪感を抱え

2人だけの『楽しい博覧会』を決行した

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