初めての気持ち

僕は今日も一人で動物園へと向かう。

彼女に会う為に。


僕と彼女、吉村海月よしむらみづきと初めて出会った日からすでに三カ月が過ぎていた。

僕が彼女に惹かれたように彼女も僕になにか思うことがあったのかもしれない。

僕たちはどちらからともなく次に会う約束をした。


僕が彼女に話かけたあの日、僕たちはお互いに少しだけ話をした。

彼女の名前もこの時に知った。

そして当初の予想通り彼女は僕よりも年上の高校生であった。

それ以外は知らない。

彼女の高校だとか、どこに住んでいるのかとか。

彼女の好きなモノでさえ僕は知らないし、僕も彼女にそういった話はしなかった。

その日はお互いにただそこにいた、そんな表現が適切だと思う。

ただそこにいて次に会う約束をしてどちらからともなく帰って行った。

本当にそれだけの日だった。

だけど、僕の中で何かが動き出した気がしていた。


この時は分かっていなかったけれどきっとこの時には僕は彼女に恋をしていたのだと思う。

理由は今でもハッリと言う事はできないし、これから先もきっと言葉にすることはできないと思う。

それでも僕は彼女に恋をしていた。

きっと最初で最後。

損得や打算など一切ない、純真で純粋。

彼女という人間にだけに向けられた一つの感情。

何も知らないが故にできたことだと今ならわかる。

真っ白できれいな恋を僕はしていたんだ。









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