動物園
僕にとって動物園は少しだけ特別な場所だった。
家族がそろって行ったことのある数少ない場所の一つだ。
僕は覚えていないが写真として記録が残っており、それを見たことがある。
画像として見た僕と家族の思い出。
だから感傷的になり、一人になりたい時に僕は近くにある動物園に行く。
動物園ではみんなが動物を見ていて誰も僕を見てはいない。
僕が僕だけの感情に深く沈むことができる場所。
だから僕にとって動物園は少しだけ特別な場所だ。
それに動物園では檻の中にいる動物たちから生命の息吹とも呼べるべきものを感じ取ることができる。
人以外の生命。
彼らは確かに生きてそこに居る。
彼らは人と言う動物に自由を奪われ、狭い檻に囚われている。
彼らは飢えることのない生活と引き換えに不自由を受け入れたのだ。
ただ生き、生かされている。
それが彼らだ。
だけど僕はそんな彼らを見て思う。
その姿は僕たちの未来の姿かもしれない、と。
何度も来ている場所だ。
僕の足は何も考えずともお気に入りの場所へと僕を連れて行ってくれる。
そこは動物園の奥の方にある為か人があまり来ない。
理由は分からないが他のキリンとは別に年老いたキリンが一頭だけいる。
申し訳程度に置かれた餌売り場がこの場所の錆びれ具合を表している。
動物園に来た時はここでキリンに餌をやりながら一人の時間を過ごすことにしている。
別にキリンが好きなわけではないがこの動物園に来るとなぜかこの年老いたキリンに会いたくなる。
だから今日もいつもと同じように彼の元へと訪れた。
だが、お気に入りの場所はいつもと違う空気が流れていた。
僕のお気に入りの場所、そこには先客が居たのだった。
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