第32話 優しくて強い

 兵団長が去り、ひとまずダイヤのデートは免れた。兵団長始め、軍人達はここのホールスタッフにベタ惚れである。軍人には、アイルやシルク、ダイヤのようなタイプは滅多にいないのだ。

「ハイド、ありがとう。」

ダイヤが久々にハイドに声を掛けた。ハイドは頭をかいた。

「ねえ、どうして言わなかったの?ダイヤさんは俺の恋人だ、デートなんてダメだって。」

レインが近づいて来て言った。

「だって、それを今言ったら、作戦を変更してくれなくなっちゃうかもしれないでしょ?」

ハイドがさらりと言う。

「へえ。あんた、頭が良いんだか、悪いんだか・・・。」

レインがそう言って苦笑いした。

「今後、デートの話をしてきたら、その時には言ってやりますよ。ダイヤさんは俺のものだって。」

ハイドは胸を張ってそう言った。そして、

「それにしても、ダイヤさんは優しいね。それに、強い。俺、惚れ直しちゃったかも。」

そうダイヤに向かって言い、笑った。

「えっ。」

ダイヤが頬を染める。

「あ、そうだ。」

レインが言った。

「もしかして、ダイヤは僕とハイドが仲良くしてるから怒ってたの?そんなの、全然気にする事ないよ?僕はロッキーの事を愛してるんだからね。」

レインはそう言ってウインクすると、厨房へ戻って行った。

「あ・・・。僕は別に、レインさんとの事だけを怒ってたわけじゃないからね!でも・・・ハイドはやっぱり、カッコイイ。」

ダイヤはそう言うと、ハイドに抱きついた。その瞬間、カフェ内がざわめいた。ハイドはいつもカフェの中にはいないので、ダイヤとハイドの間柄を知る者は少ない。今、やたらとワイルドでかっこいい若者が、どうやらダイヤと仲が良さそうだと知って、ダイヤファンの胸中は穏やかではないのであった。いやそれどころか、波風が立ってザワザワしているのであった。

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