第21話 ラブフラワーの実

 シルクは自分の部屋にラブフラワーの鉢を置いた。メタルは、ラブフラワーの実で愛が測れる事など、知らないはずだ。

 愛し合う行為をしていても、心から愛しているかどうか、分からない。メタルはテクニシャンで、どう考えても恋愛経験豊富だ。今までのメタルのお相手の事など、考えたくもないシルクだが、年若いシルクは経験も浅く、メタルに愛されれば愛されるほど、不安も強くなっていった。

 ラブフラワーを前に置いて、愛し合うのは初めてだ。いつも通り、メタルがシルクの部屋にやってきて、シルクを昇天させてくれる。その後、ラブフラワーはどうなるのか。シルクはソワソワしていた。

「どうした?まだ終わりじゃないのか?」

散々愛し合ったのに、シルクがソワソワしているので、メタルが冗談めかしてそう言った。シルクの額を撫でる。

「違います、その、ラブフラワーがどうなったかなーと思って。」

シルクが慌てて言うと、メタルはラブフラワーの鉢の方へ視線を移した。シルクもベッドの上に起き上がり、ラブフラワーを見た。すると・・・

「あ!これ・・・実が成ってる!」

シルクはベッドから急いで降りて、ラブフラワーの花の前へ行った。そして、一つの花の根元に出来た、大きく膨らんでいる実へと手を伸ばした。

「わぁ。」

シルクは涙を流した。これが出来たという事は、メタルも自分を愛してくれているという事。

「どうした?何故泣いている?」

メタルが側に来て、シルクを後ろからそっと抱きしめた。

「何でもない。メタルさん、大好き!」

くるっと反転して、シルクはメタルに抱きついた。そして、パッと離れると服をパパッと着て、

「もうこれ、要らなーい!これも庭に植えてー!」

夜中なのに、そう言ってシルクは鉢植えを持って部屋を出て行った。

「まだ赤ちゃんが出来ちゃったら困るもん。もう部屋に置いておけないや。ごめんね、ラブフラワーちゃん。」

シルクはそう鉢植えに話しかけ、とりあえず玄関の前に置き去りにした。


 「誰~、ここに鉢植え置いたのー。一つはテスト用に家に置いとくって言ったじゃん。」

翌朝、レインが玄関前に置いてあった鉢植えを持って、リビングに運んできた。

「あ、誰って言っても、シルクしかいないか。」

レインは独り言を言って、そして手に抱えているラブフラワーをよくよく見た。

「あ、実が成ってる・・・。ふふ、良かったね、シルク。」

レインはこっそり呟いた。

「誰もここで愛し合ったりしないよね?誰の赤ちゃんだか分からない、何て事にはならないようにしないと。」

ラブフラワーは、彼らのリビングの観葉植物になった。たまに、恋人の心が分からなくなった時、そっと使われるのであろう。リトマス試験紙代わりに。

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