第19話 ずっとこうして欲しかった
ダイヤは風呂に入り、部屋でじっとハイドを待っていた。ハイドは自分も風呂を済ませると、ダイヤの部屋にやってきた。これは、いつもの事である。二人は夜もよく一緒にいて、仲良く遊ぶのだ。
だが、今日は「遊ぶ」のではない。傷の「手当」をするのだ。メタルの言った「舐めときゃ治る」発言を真に受けたハイドは、ダイヤの為に「手当」を施そうとしている。
ダイヤの部屋の前で決心を固めたハイドは、ノックをしてドアを開けた。ベッドの上に座っているダイヤが顔を上げた。
いつもと違う表情をしているダイヤ。いつもは入って行くとニッコリするのに、今日は恥ずかしそうに俯いて、目を潤ませながら流し目でこちらを見る。それだけで、ハイドの鼓動が跳ね上がった。
「あ、あの。」
ハイドが声を発すると、
「ハイド、来て。」
ダイヤがそう言って両手を広げた。ハイドが近づいて行くと、ダイヤは座ったまま、立っているハイドの胴体にぎゅっとしがみついた。
「ハイド、今日は助けてくれてありがと。」
「ダイヤさん、そんなの当たり前でしょ。」
「うん。」
「じゃ、傷の手当をしよう。さ、上を脱いで。」
「う、うん。」
案外淡々と「手当」に取りかかるハイドに、ダイヤの方が躊躇する。望んでいた事なのに、いざとなると恥ずかしさと照れくささと、ちょっとした怖さが入り交じる。震える手でボタンを外し始めると、ハイドはスリッパを脱いでベッドの上に上がった。
「さ、ここに寝て。」
ハイドに促され、まるで診察台にでも横たわるかのように、上半身を露わにしたダイヤが、自分のベッドに横になった。
ベッド脇のランプに照らされて、ダイヤの胸の傷がハッキリと見えた。
「うわ、擦過傷(さっかしょう)だね。こんなにたくさん。痛かったでしょ。」
顔を近づけてよく見られて、ダイヤは思わず両手で顔を隠した。
「じゃあ、行くよ。」
まるでゲームでも始めるように言うハイドに、ちらりと別の不安がよぎるダイヤ。この子、ちゃんと意味が分かっているのだろうか。これも単なる遊びだと思っているんじゃないだろうか。
ハイドの舌がダイヤの胸の上を這う。その温かさと、濡れた感触に、ダイヤは身もだえる。
「あ、ああ・・・んっ。」
ダイヤは声を抑えられなかった。そして、その声が耳に入ってしまったハイドは「手当」という目的を完全に見失った。突起を舐め回し、脇の下、脇腹、おへそ・・・。
「い、いや、ハイド、待って、あっ。」
「ダイヤさん、俺、ダメ。」
「え?何が?」
ハイドはダイヤの服を全てはぎ取り、全身を愛した。そして、自分の服も全てはぎ取り、肌を重ねた。
「ダイヤさん、ごめん。手当してたのに・・・なんか、違う事になっちゃって。」
並んで仰向けになり、手をつないでいる二人。
「僕、本当はずっとこうして欲しかったんだ、ハイドに。」
ダイヤがかすれた声で言った。それを聞いて、ハイドはダイヤの方に体を向けた。
「俺も、ずっとこうしたかったんだ、ダイヤさんに。」
二人は笑い合い、そして、唇を重ね合った。
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