第17話 胸の傷

 家に帰ってきた面々。もうすっかり夕暮れ時である。

「今日はサボっちゃったね。ごめんなさい。」

レインがみんなに頭を下げた。シルクとダイヤもまた揃って頭を下げる。

「無事で良かったです。さあ、今日はもう休みましょう。」

ロックがそう言った。それで解散という雰囲気になったところで、レインがロックの腕を掴んだ。

「あ、あのさ。僕、胸に傷が出来ちゃったから・・・薬塗ってくれない?」

他の面々は、部屋に戻りかけたものの、そのセリフが耳に入って動きを止めた。敢えて二人の方を見ないようにしているが、聞き耳だけは立てている。

「薬ですか?いいですよ、もちろん。」

意外にもロックはさらっと答える。

「じゃあ、僕の部屋に来て。」

レインがそう言うと、

「はい。じゃあ、薬を持って行きますね。」

ロックがそう答える。レインは先に部屋へ戻った。

 ロックがリビングの棚の中から薬箱を出し、傷薬を探しているので、

「お前、分かってるのか?」

思わずメタルが言った。

「何がですか?」

薬を取り出したロックがメタルを見た。

「薬を塗るのは背中じゃないんだぞ。」

メタルが一言そう言った。

「え?」

ロックはきょとんとしている。

「胸、だぞ。」

メタルが更に言うと、ロックはハッとして目を見張った。

「まあ、行ってこい。しっかりやれよ。」

メタルはロックの背中をポンと叩いた。ロックはギクシャクした動作で、歩いて行った。

「僕も、胸に傷が出来ちゃったんだよなあ・・・ハイド、僕にも薬塗ってくれる?」

ダイヤがハイドに言うと、

「あ、でも、薬はロックさんが持って行っちゃったし。」

ハイドが言う。するとメタルが、

「薬なんてなくても、舐めときゃ治るって。」

と、横から言った。ちょっとニヤッとしながら。

「え・・・。」

ハイドはその場で硬直した。

「胸は、自分じゃ舐められないな。」

ダイヤがそう呟いてハイドを見る。ハイドの顔はみるみる真っ赤に。耳まで真っ赤になっている。

「うふふ。なーんだ、ラブフラワーなんて必要ないじゃん。」

少し離れたところで、シルクが笑って呟いた。

「で、お前の傷もだいぶ酷いよな。どうする?」

そんなシルクに、メタルが言った。

「あーあ、僕も胸にキズ作ろうかなー。」

アイルは独り言を言って、店を出て行った。アイルはこれからバースの元へ行くのであった。

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