第16話 助け

 「レインさん!」

「レインさーん!」

オオトカゲが目の前で倒れた。走ってきた7人は、思わずトカゲの上に倒れ込んだ。そこへ、レインの名を呼ぶ者達が。

「え?何?誰?」

レインが声のする方をキョロキョロすると、トカゲの向こうから銃を手にした軍人達が数人やってきたのだ。

「レインさん!無事でしたか!」

それは、カフェの常連の軍人達だった。

「アイルさーん!」

そして、バースも。

「バース!僕はここだよ!」

アイルはへたり込んだまま叫んだ。だが、後ろからウォーっと叫びながら走ってくる獣人達が。

 ドン、ドン、ドン。銃声が鳴る。銃声の数だけ、獣人が倒れた。それを見た他の獣人達が狼狽えた素振りを見せる。

「な、なんだ?こいつら!」

「人間、じゃないよな?」

軍人達が言う。

「とにかく、早く地上へ!」

ロックがそう言うと、

「そ、そうだな。おーい!頼む!」

一人の軍人が地上へ呼びかけた。すると、クレーン車のクレーンが伸びてきて、目の前にシャベル部分が降りてきた。そこへ3人は乗れるようなので、レインとシルク、ダイヤがまず乗る。そして引き上げてもらった。獣人達はそのクレーンにも恐れおののき、こちらへ近づいて来なかった。次々と地球人メンバーはクレーンで引き上げてもらった。

「あばよ、獣たち!」

最後の軍人がそう、獣人達に声を掛けて地上へ上がった。


 「助かりました。ありがとうございました。」

ロックが軍人達に頭を下げた。他の6人もそれを見て頭を下げた。

「いやー、俺たちはただ、レインさんを助けたくて。」

一人の軍人が頭をかきながらそう言って笑った。

「え?僕?」

レインが驚いて自分を指さすと、

「俺たち、レインさんのファンなんです。」

もう一人の軍人がそう言った。そして、ここにいる軍人達がみな、へらへらっと笑った。

「え!」

と声を上げたのはロックである。

「みんな、どうもありがとう!」

レインはそう言って、そこにいる、助けに来てくれた軍人達みんなに、首に腕を回して頬にチュッとして回った。


 実は、ロック達がトラクターで丘の方へ向かっていた時、屯田兵のトラックとすれ違った。その時、トラックの荷台にはラブフラワーと共にたくさんの軍人も乗っていて、その中にバースも居たのだ。バースはアイルが丘の方へ向かっていくのを見て、心配になった。

 仕事場に戻った時、あのカフェにレインさんが居なかったという話が出て、また、アイルが情報収集をしていたという話も聞き、バースは悟ったのだ。レインがラブフラワーを取りに丘へ向かい、帰ってこないからアイル達が探しに行ったのではないかと。それで、助けに行こうとしたらレインのファン達も一緒に行くという事になったのである。

「ファン、ってどういう事ですか?え?」

ロックはまだアタフタしている。するとメタルが、

「料理をしているレインさんを、うっとりと眺めている客は多いぞ。」

と言った。ロックは普段店にはいないので、知らなかったのである。

「料理をしているレインさんを・・・なんて羨ましいんだ。」

ロックが独り言を言った。

「あー!」

その時、突然レインが叫んだ。

「何?どうしたの?」

隣にいたシルクが言うと、

「ラブフラワー、置いて来ちゃったじゃん!」

と、レインが言った。

「あー!」

シルクも叫んだ。

「僕達、何の為に・・・。」

ダイヤが呆然と言う。

「どうしたの?」

アイルが改めて聞く。

「僕たち、ラブフラワーを1本ずつ取って、リュックに入れたんだ。」

ダイヤが言う。

「でも、あいつらに捕まって、リュックも取られちゃったんだよ。」

シルクが後を続けた。

「嘘だー。せっかく頑張ったのにー。」

レインは頭を抱えた。

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