第14話 お着替え
闇雲に走った。だが、どこまで行っても地上に出られそうになかった。とりあえず、もう獣人達は追ってこなかったので、一所に落ち着いた。
「とりあえず、休もう。」
アイルがそう言って座り込んだ。
「シルク、服を着ろ。」
メタルが自分の背負っていたリュックを下ろし、中から自分の服を出した。
「お、お前・・・血がにじんでいるじゃないか。」
メタルはシルクの胸の突起辺りに、触れるか触れないかくらいにそっと指を添えた。
「痛かった。怖かったよー、メタルさん!」
シルクはそう言うやいなや、メタルに抱きついて泣いた。
「よしよし、ほら、このボロボロな服は脱いで、着替えろ。な?」
メタルはシルクの頭を撫でながら、そう言って着替えを促した。
一方、ダイヤの引き裂かれた服を見たハイドは、顔を引きつらせたまま固まった。ダイヤはその視線を感じて、両腕で胸を隠した。
「ダ、ダイヤさん・・・あ、俺の服、今出すから!」
ぎこちなく服を出したハイドは、引き裂かれた服を脱ぐダイヤの様子を見て、ごくりと唾を飲み込んだ。目玉が飛び出している。
「服、ありがと。」
ダイヤはハイドが手にしている服を取り、着た。まだ固まっているハイドに、ダイヤはそっと抱きついた。
「助けてくれて、ありがとう、ハイド。ハイドは強いね。カッコよかったよ。」
ダイヤが静かに言うと、ハイドはそっとダイヤの背中に手を回した。
そしてロックとレインの二人である。
「レインさん!あ、あの、俺の服で良かったら、どうぞ!」
ロックはレインの方を見ないようにして、服を差し出している。
「ロッキー、ごめんね。カフェの開店時間までには帰るつもりだったのに。」
レインは服を受け取りながら、そう言った。
「何言ってるんですか。そんな事、いいですよ!」
そう言いつつも、まだロックはレインの方を見ない。
「助けに来てくれて、ありがとう。ロッキーが、あんな風に戦えるなんて、知らなかったな。」
服を着ながら、レインが言う。やっとロックがレインの方を向くと、その瞬間を待っていたかのように、レインはロックに抱きついた。
「レ、レインさん!?」
「僕、怖かったよ。殺されるかと思った。服とか破られて、棒で突かれて、痛くて。」
ロックは恐る恐る、レインの背中に手を回した。だが、すぐに放した。
「と、とにかく、何とか外へ出ないと。」
ロックはそう言って、レインをそっと自分から放した。レインはちょっと唇を噛んだ。
「やっぱり、あのトカゲのいたトンネルに戻らないと、地上には出られないのかな。」
一人、座り込んでいたアイルが言った。そして、立ち上がった。
「戻る?」
レインが遠慮がちに言って、みんなを見渡した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます