第8話 花

 カフェの営業中、畑仕事をしていたハイドが店の窓から顔を出した。

「ダイヤさん。」

ハイドは、接客をしているダイヤが近くへ来た時に、声を掛けた。

「ハイド!どうしたの?」

ダイヤは窓に駆け寄った。

「この花が綺麗に咲いていたので、ダイヤさんに届けようと思って。」

ハイドは手に持っていた花束を高く掲げた。

「わぉ、綺麗だね。ありがとう、ハイド。」

ダイヤは嬉しそうにその花束を受け取った。ダイヤの笑顔と花のコラボは、ハイドにとってかけがえのないご褒美だった。

 ハイドが花を渡して畑へ戻ってくると、ロックが顔を上げた。

「渡してきたか?」

「はい。ダイヤさん、喜んでくれました。」

こちらもこぼれんばかりの笑顔をたたえ、ハイドが言った。

「・・・お前、ダイヤの事が本当に好きなんだな。」

放心したようにロックが思わず口にした言葉。ハイドは何を今更、という顔をして、

「そうですよ。ロックさんだって、レインさんの事が好きなんですよね?」

と、さらっと言った。するとロックは、

「え!な、なんでそう思うんだ?」

と、慌てる。

「見ていれば分かりますよ。」

ハイドはもう仕事に戻っていた。ロックはアタフタしたものの、ハイドが反論の機会を与えてくれなかったので、そのまま黙って作業を続けた。

 夕飯時になり、カフェが混雑して来た頃、一人の軍人が入って来て、大きい声でこう言った。

「おい、俺すごい物見つけたぜ!ラブフラワーだよ。あの丘の向こう側に群生しているのを見たんだ。」

カフェ内がどよめいた。

「何だって!それは本当か?」

「すごいぞ。お手柄じゃないか。」

軍人達が口々に言う。

「上に報告したら、明日にでも調査に行って、トラックで街に運ぶってさ。」

「掘り出し作業か。疲れそうだな。」

軍人達は盛り上がっている。ラブフラワーは高価だ。しかも、この辺では売っていない。街へ出て行って、高いお金を出して買ってくるしかないのだ。それが、この近くに生えていたとは。

 カフェの従業員達も、その話はばっちり聞いていた。

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