第2話 自給自足カフェ
ある青年が、こんなビラをあちこちに貼った。
「自給自足カフェを一緒にやりませんか?」
青年の名はロック。22歳である。
地球人がノアに移住してから、半世紀ほどが経った。ここで育った子供が大人になり、それなりに行政や教育のシステムも整った。
ノアにはいくつか国があった。地球にいた頃の先進国のいくつかが、それぞれ自分達の国を作ったのだ。隣の国との境目は曖昧で、まだまだ未開の土地が広がっていた。
ロックが住んでいる国は「ムサシノ国」と言い、隣の「サルボボ国」や反対側の「チーバ国」に挟まれていた。未開の土地を隣国に奪われてはいかんと、各国が開拓にいそしんでいる。ムサシノ国でも、街の外れに屯田兵(開墾が目的の兵士)達が駐屯していて、未開の土地の調査、開墾をしていた。
そんな、国の外れにカフェを開こうと思ったロックは、ビラをあちこちに貼った。すると、6人の若者が集まってきた。
24歳のレイン、23歳のメタル、22歳のアイル、21歳のシルク、20歳のダイヤ、18歳のハイド。ビラを手に、ロックが手に入れた住宅兼カフェにやってきた。
「みんな、ようこそ自給自足カフェへ!」
ロックは仰々しく迎え入れ、全員にハグをして回った。
「どうして自給自足なの?」
シルクが聞いた。
「この外は未開拓の土地だろ?ここで、色々と試したいんだ。どんな方法で育てれば、何がよく育つのか。」
ロックが答えた。
「つまり、植物の研究がしたいってわけだね?」
レインがそう言って微笑んだ。その微笑みを直視してしまったロックは、一瞬ぽかんと口を開けて呆けた。
「俺たちは、何をすればいいんだ?」
そんなロックの様子など我関せずのメタルがそう問いかけると、ロックは我に返った。
「一緒に畑仕事をしたり、それからこの部屋はカフェにして、料理やコーヒーを提供しようと思っているので、その辺りをそれぞれ担当してやってもらいたいと思っています。」
ロックが言うと、メタルはコクコクと頷いた。
そういうわけで、7人はそれぞれの部屋に寝泊まりしつつ、一緒にカフェを切り盛りし、畑で野菜などを育てる事になった。因みに、肉を食べる習慣はなくなった。様々な豆をハンバーグなどにアレンジして調理し、タンパク質を補うのである。
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