回り始める

謎の少女「安達小夏」に出会って1日が経過した朝。

幸か不幸か今日は土曜日、学校はない。

今日はなんだか、嫌な予感がする。

僕は、あまり深く考えないようにと、考えていたことをかき消すように大きな溜め息をついた。

「なに寝起き早々ため息なんかついてんの?ご飯できたよ。」

目を開いた途端、目の前にはため息の元凶が立っていて思わず「うわぁ!」と朝から大きな声を上げてしまった。

「うぉ、びっくりしたなぁ」

「なんで、居るんだ…」

「なんでってあんたが居候していいって…」

そうだが、そうじゃない。なぜ僕の部屋に勝手に入ってきてるのかだ。

「とりあえず、顔洗ってきて。朝ごはんできてるから。」

と、一言いって出て行ってしまった。

「朝からびっくりさせんなよな…」と、ぼそっとやるせない気持ちを吐き出しつつ言われた通りに洗面台に行き、顔を冷水で洗う。朝に顔を洗うなんて何年ぶりかもわからないくらい珍しい行為だが、目が冷めて案外いいことかもしれないと、気付かされてしまった。

タオルで顔を拭き、リビングに行くと、机の上にはご飯はもちろん焼き鮭やお味噌汁、漬物なんかもあり、少し豪華な朝ごはんが並べられていた。

「お礼に、ご飯でも作ってあげようかと…」

机の上に並べられた朝ごはんに見入っていると、彼女が「だめだった?」と顔を覗き込むように訪ねてきた。

「いや、だめじゃないけど…少し驚いて」

「なにそれ、私が料理できないって思ってるってこと?」

「そういうことじゃないけど…」

居候するためとはいえ、なんで朝ごはんなのかわからない。もっとなにか違うことがあるだろ。まぁ毎日健康的な朝ごはんを食べれるとしたら、いいことなのかもしれないな。

そんなことを考えていて彼女の小さな「すこし違う…」という言葉を聞き逃していた。

こんな健康的なご飯は久しぶりだなと思い、無意識に笑みがこぼれていた。

「なに、いきなりキモいって」

「キモいっていうな、昔を思い出しただけだ。こんなしっかりとした朝ごはんは久しぶりだなって。」

ったく、せっかく美味しい朝ごはんを堪能しているときに、キモイってなんだよ、失礼なやつだな。と心の中で、久しぶりのしっかりとした朝ごはんに、感動していたところに水を刺されたことに文句をたれていると。

「え、あ、ごめん…」

向かいに座っていた小夏が、今にも泣きそうな顔で謝ってきた。

「なんで、あやまんだよ。過去は過去、今は今だろ?いくら望んだって過去には戻れない。でも思い出として、思い出すことはできる。だから過去を思い出して、あんな日はなんであんな判断をしまったんだって思っても、あの時あーにしてれば、こうしていればって思わないで、過去はもうしょうがない、次似たようなことがあったら、絶対に間違えてやるもんかって、悔しさや後悔を闘志にかえんだよ。そしたら、だんだん後悔しなくなって失敗だって少なくなる。」

「なんていうか、たまにはいいこと言うね」

「まぁ、死んだ母さんの受け売りなんだけどな。」

「それやめない?なんか悲しくなる。」と小夏は、死んだ母さんの話をするのを拒んだ。確かに、人の親や家族が死んだなんて聞いたら、どんな顔をすればいいか、わからないし。しょうがないか。と諦め、二人は、黙々と朝ごはんを食べすすめた。


土曜日だということで、学校も休みだし、ショッピングモールに行くことになった。小夏の服は制服しかないため、私服や部屋着を買いに行くのだが、パラレルワールドから来た小夏は、お金を持っていないため、バイトをしている僕がおごるつもりだが、小夏はそういうのが嫌だったらしく、バイトして返すらしい。

「ここがショッピングモールね。向こうと場所も作りも一緒なんて…」

生きてる人間が違うだけで、建物や歴史自体は、変わってないらしい。なんというか…ところどころ雑だなって思ってしまった。

ショッピングモールに入ると、さすがJKと言わざる負えないほど、どんどんお店を行き来するので、追いかけるので精一杯だった。

結局、パジャマ一セットと、私服用に何着か買っていた。下着なども買うだろうと、財布は渡してあったので、何を買ったかは知らないのだが、小夏に何を買ったのか訪ねると「いつか見せるから今は内緒」と教えてくれなかった。

どんな服買ったかくらい見せてくれたっていいだろう。と思ってしまったが、女の子とはそういうものなのか。と自己解決した。

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