第69話

「どうしたの? 琉希」

 私の服に手をかけかけて、止まった琉希に訊ねてみた。

「いや、まだ誕生日じゃないから。誕生日にって話してたから」

「琉希ってそういうところ何気に律儀だよね。たいてい流れでどうにかしてる人のが多いと思うけど」

「いや、僕だってめっちゃ関係進めたいよ? でも、杏子と約束したことだから。そのかわり、毎晩杏子のことぎゅっとして寝るね」

「いいけど、なんで?」

「杏子の貞操のためです」

「……? 夜中トイレ行きたくなったらどうすればいいのよ?」

「そんなの起こせばいいに決まってるじゃん」

 わけのわからないことを大真面目な顔で言う琉希。

 それから毎晩、琉希は私の部屋に泊まりに来て、やはり私を抱きしめながら寝るのだった。

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