第49話 番外編〜女子社員の失恋物語〜

 あと何回、好きな人を結婚に送り出すんだろう。最近、よくそう考えるようになった。

 仕事の先輩の水間琉希先輩。人見知りな私に気さくに話しかけて仕事を教えてくれた先輩だ。いつも笑顔でキラキラしている。そんな彼にいつの間にか恋をしていた。

 先輩が突然有給を取った翌日、彼の左手の薬指には銀色のシンプルな指輪がはめられていた。「おー、ようやく琉希の片想いが実ったのか」と先輩方が水間先輩をからかうのを横目に、私は軽くため息をついた。

 私は恋をするのが苦手だ。いつもはさほど揺れ動かない心が、些細なことで揺れ動くのが苦手だ。そんな私も、何度か恋をした。でも、奥手な私がアプローチする暇もなく、彼らは結婚してしまった。片想いのまま、恋が終わった。消化不良のこの心をどこに持っていけばいいのだろう。

「山梨、浮かない顔してるね? どうしたの?」

 何も知らない水間先輩が私に声をかける。

「ちょっと調子が出ないみたいで。大したことではないですよ」

 咄嗟に嘘をつく。好きな人の結婚報告が大したことないわけ、ないのに。

「山梨の調子が出ないんじゃ、この課の未来が心配だなー。早く調子戻してね」

 私が大好きな飴ちゃんとコーヒーを机の端に置いて、水間先輩は立ち去った。全く、罪な人だ。

 次こそは、失恋じゃない恋ができますように。

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