第44話
「あーんず! 家デートもいいけど、久しぶりに外デートしよーよ!」
ある日の仕事終わり。電話での会話中、僕は杏子を外デートに誘った。「うん」と答える杏子。久しぶりの外デート、わくわくするな。
「どこに行く?」
杏子が訊ねてきた。
「いつも僕から誘ってばかりだし、今日は杏子の行きたいところに一緒に行きたいな。杏子の日常を一緒に堪能したい!」
デートの誘いはたいてい僕からだから、杏子の行きたいところに一緒に行ってみたいなというのを伝えると、「ショッピングモールに行きたいな」といった返答が返ってきた。
「うわあ、日常! って感じがしていいね!」
自然とテンションが上がる。ショッピングモールか、杏子はどんなお店に行くんだろう。「ま、僕は杏子と一緒ならどこでも楽しいけどね!」と本音も付け加えた。
「久々の外デートだね。外で杏子と手を繋ぐの、僕めちゃくちゃ嬉しいなー!」
前回はプロポーズのことを考えてばかりで、正直デートを楽しむ余裕そこまでなかったんだよね。今回はあの時より心に余裕があるから、杏子とたくさんデートを楽しみたいな。
「琉希、私と手を繋いで歩きたいの?」
杏子が不思議なことを訊いてくる。そんなの当たり前じゃない。
「うん、もちろん! 大好きなお嫁さんの手を繋ぎたいのはいつもだよ!」
「じゃあ、今も?」
「そうだよー。一緒に住んだらたくさん繋げるから、平日の夜の楽しみはその時まで取っておくかなー」
そんなこと訊ねてくるから、余計に早く手を繋ぎたくなったじゃん。あーあ、早く一緒に住みたいな。
「私も、琉希と手を繋げるの、嬉しいよ」
「……」
杏子がそんなことを言ってくれるなんて。感動が胸に押し寄せてきて、なかなか言葉が出てこない。
「杏子、可愛い。これから、もっともっと素直になってね」
「素直になるの、得意じゃないけど、頑張ります……」
心がようやく落ち着いて伝えると、杏子が遠慮がちにそう言ってくれて、すごく嬉しい。
「楽しみにしてるね!」
これからたくさん素直な杏子を見られるのか。楽しみで仕方がないな。
「でも杏子のそういう恥ずかしがり屋さんなところも好きなんだよねー」
それで、僕が杏子のことを褒めたりすると赤くなるところとか、最高に可愛い。
「とにかく、僕は杏子の全てが大好きだからね!」
結局、最終的にはその一言に尽きるんだ。
「ありがとう。なんか照れる……」
その後も、杏子の好きなところを褒めまくった。いちいち反応してくれて嬉しい。特に髪型とか。普段はポニーテールだけど、下ろした髪も好きなんだよね。まあ、杏子にかかれば、ハーフアップだって何だって似合うだろうけどさ。
「ありがとう、琉希。嬉しい」
杏子に喜んでもらえて、僕も大満足だ。
「じゃあ、これからはもっといっぱい杏子のいいところ伝えていくね!」
「ありがとう」
「おやすみ、杏子。杏子と電話して幸せな気持ちになったよ。ありがとうね」
「私こそありがとう。琉希にたくさん褒めてもらって、ちょっと自分に自信を持てた気がする」
それは嬉しい。何せ、僕と付き合う前の杏子は、本当に自分に自信がないみたいだったから。
「杏子はもっと自分に自信持っていいんだよ! 僕の最高のお嫁さんなんだから!」
もっと自信を持ってもらえるように、僕も頑張ろう!
「ありがとう。琉希のお嫁さんになれて、私ラッキーだな」
「そう思ってもらえるなら嬉しいけど、僕は杏子だからお嫁さんにもらいたかったんだよ。だから、これは運だけじゃなくて、杏子の日々の努力の結果だよ」
杏子は自分からは言わないけど、物凄く努力家だ。その努力家なところも、そういう面をひけらかさないところも好感が持てる。
「ありがとう、琉希。おやすみ」
「おやすみ、大好きな杏子」
電話を切った後、僕はデートの日を想像して楽しみを膨らませながら、床についた。
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