第43話

「あーんず! 家デートもいいけど、久しぶりに外デートしよーよ!」

 ある日の仕事終わり。電話での琉希の提案に、「うん」と答えた私だった。確かに、外デートらしい外デートはプロポーズされたあれっきりなんだよな。ちょうど私も久しぶりに琉希と外出してみたいなと思ってたところだし。

「どこに行く?」

「いつも僕から誘ってばかりだし、今日は杏子の行きたいところに一緒に行きたいな。杏子の日常を一緒に堪能したい!」

 琉希がそう言うので、ショッピングモールに行きたいと思った。衣食住全ての買い物ができるし、買い物の合間にフードコートで食事もできる。

「ショッピングモールに行きたいな」

「うわあ、日常! って感じがしていいね!」

 琉希はニコニコしながら、「ま、僕は杏子と一緒ならどこでも楽しいけどね!」と付け足した。それって、もっと私と外出したいってことかな? 

「久々の外デートだね。外で杏子と手を繋ぐの、僕めちゃくちゃ嬉しいなー!」

 琉希が聞いてるこちらが照れるような言葉を言う。

「琉希、私と手を繋いで歩きたいの?」

「うん、もちろん! 大好きなお嫁さんの手を繋ぎたいのはいつもだよ!」

「じゃあ、今も?」

 ちなみに、今は仕事終わりに電話をしている状態なので、もちろん手は繋げない。

「そうだよー。一緒に住んだらたくさん繋げるから、平日の夜の楽しみはその時まで取っておくかなー」

 そう返してくる琉希。相変わらず素直だな。琉希が素直でいてくれるから、私も安心して一緒にいられるんだよね。

「私も、琉希と手を繋げるの、嬉しいよ」

「……」

 私も勇気を出して素直になってそう言うと、電話の向こうがしばし無言になった。らしくないって思われたかな。

「杏子、可愛い。これから、もっともっと素直になってね」

 しばらくして、琉希の嬉しさでいっぱいの反応が返ってきた。

「素直になるの、得意じゃないけど、頑張ります……」

「楽しみにしてるね!」

 恥ずかしさを飲み込んでそう伝えると、琉希が満足げにそう返してきた。

「でも杏子のそういう恥ずかしがり屋さんなところも好きなんだよねー」

 そう思ってもらえてるなら、ありがたいな。

「とにかく、僕は杏子の全てが大好きだからね!」

「ありがとう。なんか照れる……」

 その後も、琉希はたくさん私を褒めてくれた。ポニーテールも好きだけど、下ろしてる姿も好きらしい。「杏子はどんな髪型をしても似合うよ!」と言われて、性格も褒められて。自分でもちょっと気をつけてるところも褒めてもらって、琉希は小さなことにも本当によく気がついて、嬉しくなる。

「ありがとう、琉希。嬉しい」

「じゃあ、これからはもっといっぱい杏子のいいところ伝えていくね!」

「ありがとう」

「おやすみ、杏子。杏子と電話して幸せな気持ちになったよ。ありがとうね」

「私こそありがとう。琉希にたくさん褒めてもらって、ちょっと自分に自信持てた気がする」

「杏子はもっと自分に自信持っていいんだよ! 僕の最高のお嫁さんなんだから!」

 琉希は自信満々にそう言った。大袈裟な気もするけど、嬉しいな。

「ありがとう。琉希のお嫁さんになれて、私ラッキーだな」

「そう思ってもらえるなら嬉しいけど、僕は杏子だからお嫁さんにもらいたかったんだよ。だから、これは運だけじゃなくて、杏子の日々の努力の結果だよ」

「ありがとう、琉希。おやすみ」

「おやすみ、大好きな杏子」

 電話を切った後も、その余韻に浸る。風邪を引いて琉希が寝込んだ日も、婚姻届を渡された時も素直になれなかったけど、琉希と結婚できて本当に幸せだな。これからたくさん琉希に恩返ししていきたいな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る