死神を見る少女
意識の海で目が覚めた。
どこにでもあり、どこにでもない。
浮いていながらも、自分が存在していない。
深淵を見ながら銀河の星空を見通せる、海。
「満足だったか」
「死神君」
「クヒヒ、いつの間に死神さんから死神君になったのやら。あの観覧車での熱烈な接吻からか?」
「うるさい、しね」
「クハハ!もう君は死んだ身、私は生きても死んでもいない」
ならここは死後の世界という事ね。
三途の川だと思ったけど、違うのね。少し残念ね。
死神君の次の言葉で死を受け入れていた思考を吹っ飛ばされた。
「ここは三途の川の手前だ。いわゆる次元の狭間みたいなもんだ」
「...は?何で?」
「本来なら使者を導くとしても、話すことはないからな。興が乗ったまでよ」
「え?何?私に未練でもあったの?あんたが?マジ?」
「クハハ!そのマジだ」
え...本当にそこまで、私の事を気にしていたの。何万何億と死人と接触する死神君が、ただちっぽけで哀れな少女を?
「久しぶりに伝えねばならないと思う事があってな。皆と親父殿からの言葉だ」
「え...」
心臓が止まると思った。もう止まっているけれど。
「まずは皆から、だな。ありがとう、楽しかった、だとよ。苦しくても、悲しくても、それでも恋を出来て良かった、と」
「そう」
心臓が抉られるような気分でありながら笑顔が浮かんでしまう。涙が出てしまう。
本当に、本当に感謝されていたなんて。
抉られるようで、暖かい。
「親父殿は、この一年は夢の様だったとよ。娘が元気に、皮肉も言いながらも学校を楽しんでいるようで夢を見ていた気分だ、とよ。嬉しくて、儚くて、来世はちゃんと元気な性格に似あった元気な体であれば、とな」
「お父さん...お父さ゛ん゛」
こらえていた感情が噴き出てしまう。泣いてしまう、泣けないのに。叫んでしまう、聞こえないのに。
死神君は、いつかの様に、優しく抱いてくれている。包み込むように、あふれ出る感情をそっと集めてくれるように。
お母さんにも、申し訳ない事をしてしまった。弱いとは言わない。あんなにも愛してくれて、愛した故に希望と絶望で壊れてしまったんだから。
「さて、そろそろ三途の川へと案内してあげよう。しんぱいするな、奪衣婆には私から言っておいたから、橋は渡れるはずだ」
「ちょっと待って」
「なんだ?」
「あんた、こんな事、何度もしているの?」
「いや?今回は、そうだな。興が乗ったからだ。私が見えないくせに、私に気付いた少女がいたからな」
「こんなにもめちゃくちゃにしておいて、ただで逃がさないわよ。...だから、その、責任?とって」
「...ん?」
「責任、とって」
「...もう一度、はっきりと言ってくれないか?」
「だから!」
死神君の顔を見た。
彼の頬をつねった。当然よ。にやにやして!
「どうせ一人で死神やるんだったら、相棒がいた方がいいでしょって言ってるの!だから...」
「ふむ」
「私も一緒に死神やる。だから、連れて行って、洞窟の、外に」
彼の顔をもう一度見たら、と思ったら矢先。
キス、されていた。
一瞬であり、永遠の後。
「さて、閻魔に新たな死神の事を伝えねばならんから、ついてこい」
「う、うわぁ、なんかっ聞く限りブラックな職業に転職、転生?したような。でも、閻魔って存在していたのね、ちょっと怖いわ」
「クハハ!心配するな、親父は私に甘いし、ふくよかな御仁で豪胆だ!それに過労死何て地獄ではおこらないさ!」
「それって地獄だから皆死んでいるも当然だからでしょ?!完璧にブラックなんですけど?!あと、あんたの父親閻魔だったの?!これって両親へのご挨拶じゃん!ちょっと!」
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これで死神と少女のコイバナは終わり~わ~い(^^)v
次にどういう恋愛短編を書くかは考えています、どうかお楽しみに。
もちろん不定期更新です、ご容赦ください。一応ツイッターで行進はツイートするので。
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