死神を見ない少女

あっという間に一年が過ぎた。


他の‘奇跡の子たち’はすでに代償を払った。勿論、‘普通’の高校生、恋愛を楽しんだ代償、人生の、生きる事の代償は当然死になる。対となる生と死、それを払った。


それに私と死神君は立ち会った。


彼は死神として。


私は彼彼女らを生きる理由を与えた張本人として。


本当に、ただ本当に心を締め付けられるような思いをするとは思わなかった。ただの思い付き、死神君に依頼されたからみんなを恋に落としたのに。


私が干渉しなければ、恋をしなければ長く生きれたのに。別れを苦しまなくても済んだのに。


何で。


何でよ。


私の事を責めなさいよ!喚き散らしなさいよ!


こんなに苦しい思いをしている筈なのに!悲しくないはずないのに!何で!


何で、私なんかに。


今、病院のベッドの上で思い出しても涙が出る。目が見えないのに彼彼女らの最後の笑顔が浮かぶ。


「なんでよぉ」



涙は頬を拙かった。頭を撫でてくれた。彼は、死神君は皆に向けた同じ、慈しむ笑顔を向けているのだろう。


もう視力は無くなった。いや、元通りになった、というべきね。


それに伴い、体力は衰退して再度入院する事になった。医者が言うには奇跡の一年を神様が当てたくれたのでしょう、と。本当は死神君のちからなんだけれどね。



その全てが、そろそろ終わり。久しぶりにお父さんの声を聴けた。お母さんには迷惑を掛けてしまった。


「ここにいるぞ、灯華とうか。父さん、最後までに一緒にいるからな。伊織君も一緒だ」


声ももう出ない。弱く、本当にもう指をかすかに動かすしかできない程度に、お父さんの手を握り返す。


お母さんは、壊れてしまった。奇跡の後の絶望は、あまりにも重荷だったみたい。


申し訳ない事をしちゃった。


親孝行、出来なくて、ごめんね


そうして意識が遠のいてしまう。


********


二話更新しています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る