憧れだった屋上...

私たちはテレビで奇跡の五人と呼ばれていたらしい。昔からテレビが嫌いだったから知らなかったけど、同時期で同じように不治の病と言われた患者が五人も一斉に治れば奇跡とも言われるのに納得する。


双子の内気な妹さんを除き、クラスでは奇跡だという事でちやほやされていた。珍しいので驚きもしないけど、五人いてその好奇心が分散されたのは良かったと思う。


生憎テレビは嫌いだったから寝耳に水だったけど。



もともとテレビは嫌いだった。音しか聞こえず、s説明されている映像は見れなかったから。


その点、本は好きだった。読み上げ昨日は文明の利器であると思う。漫画は嫌いだったけど。


だから少女漫画でありきたりな屋上の何たらを知らない、というわけではない。


だって、声優さんが読み上げるノベルゲーを遊ばないわけにはいかないから。フィギュアとかで触れる事さえできれば容姿もわかる。


だから屋上に呼び出されて騒がれるのはわかる。


無論、私も期待していた事は否定できない。こいつでなければ。



「流石に気付くのは君だけだったな、自称ショームズ君」


「生憎視覚はかけていたけれど、病院にいた患者で洞察力だけは私の右に出る者はいなかったよ」


「フハハ、だから俺が誰だかわかったというのか?大したバケモンだよ、君も」


「ふん、何を勘違いしているのかはわからないけど、私は頭の構造が少し特殊なだけの人間。正真正銘の死神である君の方がよっぽど人間離れした化け物と言えない?」



そよ風がふく晴天の屋上でくだんの死神は総会に笑う。じめじめした、死臭が漂うような死後の世界ではなく、晴れた春の桜咲く季節に死神は笑う。


でも、わすれてはいけない。


「フ、さて。化け物の皮を見破ったからには、相応の報いがあるのは逸話で伝えられていたな」


「鶴の恩返しも、オルフェウスが冥界にわたった時も、いつも真実を見れば後悔する。それでも、私は無知でいる方がいやよ」


「ならば、その浅はかな好奇心に報いを与えよう。君は知ったからには契約してもらう。プラトンが考察したように、洞窟から他の者たちは引きずり出してもらおう」


晴天の下、桜咲く春の日、死神は醜悪な笑みを浮かべる。


「恋という呪いの下へと引きずり出してもらうぞ」

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