選ばれし者共よ
あぁ、あの死神さんは本当に性格が悪いと思った。
次に入ってきたのは茶髪碧眼の美男子。あまり注目するところがない、ごく普通のイケメン。
でも歩く音で聞き分けてしまった。
彼は普通ではない。
まず、歩き方が普通ではなかった。些細な違いで病院に長い間いなければ聞き分けられなかったと思う。
左足がコンマ数秒だけずれている、まるで使うのに慣れていないかのように。たどたどしく、生まれたての小鹿の様な歩き方。
それに、右手をさする事があまりにも多い。開いたり結んだりして、まるで感触を確かめるかのように繰り返している。
考えすぎかもしれない、とはすぐに否定できる。恐らくはあの死神さんが私の様に‘奇跡’を起こしたんだろう。
だって次に入ってきた女の子も同じように新しい感覚に慣れようとしている。
彼女の自己紹介の時、自然に手話を使っている。言い訳は家族で耳の不自由な人がいるそうだけど、あまりにも自然すぎる、第一言語として習った手際の良さ。
それに声も耳をすませば微かななまりがある。
彼女もまた死神さんが手伝ったんだろう。
今度は双子の姉妹、って何人編入生がいるのよ?!死神さん頑張りすぎじゃない?!
まぁ、死神さんの心境について考察するのは後回しにする。
あの双子は表向き‘奇跡’が起きたようには見えない。だから内なる問題を治されたとみていいと思う。
姉の方は活気があり、自己紹介にも力がある。妹の方は内気でどもりながら自己紹介をしている。
精神的な事かしら?いえ、それにしてはあまりにも性格が馴染みすぎている。
...あぁ、そういう事ね。姉はバンダナ、妹は潔癖症。可能性としては、癌、それも姉妹揃って免疫力に影響出るタイプの。それは治ったけど、生活の修練に現れている。
本当に、死神さんは面倒な事をしているわね。
ねぇ、死神さん。
窓際の一番後ろ、という定番の主人公スポットの一個手前の席。
そこに、一瞬私を見て醜悪な笑みを浮かべる、パッとしない一人の男子生徒がいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます