第8話 初めての魔獣討伐

 小川沿いに5キロほど森の中に入った。明るい陽射しのお陰で静寂な森に恐怖を感じることは無い。そろそろ、今夜の寝床を作っておきたい。この辺りなら、【ライト】の生活魔法を使っても、薪を燃やしても、人の目にはつかないだろう。魔獣はどうだろう。火を恐れるのか、そうではないのか。


 レベルが上がれば攻撃スキルで、樹々を伐採して木を組み合わせて小屋のようなものは作れるかもしれない。なので、今はレベル上げのことで頭が埋まっている。なんとなく、強い魔獣の縄張りは、人里から遠いという先入観がある。村を出てから四時間は経っただろうか。

 俺は川沿いの太めの木と木の間に、大きめの石を2m三方に並べて、50㎝ほどの高さに積んでそこに1mほどの高さの木の枝を隙間なく立てかけた。ナイフで木の枝の先端を研ぐと、簡単に地面に突き刺すことが出来た。


 川方向だけは空けている。薪を重ねて、アイリーミユの【着火Ⅱ】で火を焚いている。


 少なくとも寝ている間に、地を這う小動物に突撃されることは無いだろう。床面にドライとクリーンをかけて、その上に村から持ってきた布や服を広げた。その間、アイリーミユに探知をお願いした。動物はレベルがなく、魔獣にはレベルがあることを彼女は俺に教えてくれた。


 完成後、俺は川に向かって、背を太い木にもたれかけ、その俺に、アイリーミユがもたれ掛かった。


 魔力残量は38/50から46/50に回復していた。彼女も25/50から33/50に回復した。四時間で8回復している。1時間当たり2ずつ回復するのかな。レベルが上がればまた変動はあるだろう。


「川の上流から、魔獣が近づいているわ。近づくスピードは遅い。脅威度はあまり高くない」


 スライムとかかな。俺たちの攻撃手段は、女神の短剣と足元の石、それと火のついた薪だ。酸耐性も毒耐性があるから、スライム程度なら、と俺は高をくくっていた。まさか、スライムが魔法を使うとは思っていなかったのだ。


 はじめのうちは、足元に水がかかっても、魚が跳ねたのかなとか、焚火の薪がパチッと燃えて火花が飛び散っているのかと思っていた。

「ねえ、これ、川岸から攻撃を受けているわよ、探知Ⅱに敵意あり」


 水が飛び散った草木は、ジュウっと酸で溶かされように見える。とても小さな火の弾は、火花ではなく、スライムの【火弾】なのかもしれない。当たっても回復できそうだ。川岸に行くので待っていてくれるか?と彼女に尋ね、彼女も同意した。


「目に、酸が入らない様に気を付けて」


 わかった。俺はフードを被り、川岸まで3歩ほど身を乗り出した。日は沈んだが、真っ暗ではなく夕方から夜にかけての明るさだ。森の中ということもあり、薄暗い。


【ライト】


 明かりをつけると、スライムだろう。どう見てもスライムだ。それが8匹いた。水色の半透明の奴と、赤色の半透明の奴だ。水色が酸を飛ばし、赤色の奴が火種を飛ばしているのが見えた。死体からでもスキルは拾えるので殲滅優先だ。スライムと同じ大きさの石を奴らの頭上から落とす。


 ぐにゅん、と音はしないが、一撃で、動かなくなった。赤い奴は足で踏んだ。青い奴は石を落とした。あっさり殲滅した。俺は、彼女とのところへ戻り、スキルが短剣で獲れるか試してみようと手を繋いで語り掛けた。8回短剣の先をスライムにあてたところ、俺たちの体が3回光った。彼女がスライムを鑑定した。


 ▼鑑定

 ブルースライム:レベル3 獲得経験値6 酸を吐く ドロップ、小さな魔石

 レッドスライム:レベル4 獲得経験値8 火種を吐く ドロップ、小さな魔石


「24、32で56経験値。3倍だから168ね、少しはレベル上がったかしら」


 彼女が、スライムを鑑定をしてくれている間に、俺は小さな魔石を8個拾い集めた。本当に小さい。そんな話をしながら、先ほどの木の枝にもたれかかり、膝の中に座る彼女を抱きしめた。



▽ステータス

ベルンハルト:レベル5(+3)

(NEW)-----

耐性魔法:酸Ⅱ(+1)、熱(New)

攻撃魔法:マジックランス(開放)

防御魔法:マジックシールド(開放)


HP:175(+75)

魔力:442(+392)

攻撃:20 (+10)

防御:20 (+10)

迅速:20 (+10)


▽ステータス

アイリーミユ:レベル5(+3)


(NEW)-----

耐性魔法:酸Ⅱ(+1)、熱Ⅱ(+1)

攻撃魔法:ファイア・バレット(開放)

防御魔法:ファイア・ウオール(開放)


HP:175(+75)

魔力:442(+392)

攻撃:20 (+10)

防御:20 (+10)

迅速:20 (+10)


「なにこれ、凄く強くなっていない?」


 あはは、世界最強かな? 


「スライム8匹で?この世界の平均レベルを知るのが、少し怖いわね」


 とりあえず新しいスキルを確認しておこう。


 攻撃魔法:マジックランス

 魔法の槍を生成。同時に3本まで展開可能。槍1本あたり3の魔力消費量(20%の消費魔力低減のため2)飛距離は、レベルN×1m


 防御魔法:マジックシールド

 魔法の盾を生成。同時に3枚まで展開可能。盾1枚あたり3の魔力消費量(20%の消費魔力低減のため2)、効果範囲はレベルN×1m


 攻撃魔法:ファイア・バレット

 火属性の弾を生成。同時に五弾まで展開可能。弾1個あたり1の魔力消費量(20%の消費魔力低減のため実質0)、飛距離は、レベルN×1m



 防御魔法:ファイア・ウオール

 火属性の壁を生成。同時に3枚まで展開可能。壁1枚あたり5の魔力消費量(20%の消費魔力低減のため4)、効果範囲はレベルN×1m


 色々と突っ込みどころは多いけれど、レベル5の割にはたくさん使えそうだ。


「私のバレットって、10発撃っても魔力消費量は実質0ってことよね」


 そうだね。飛距離は現在5mか。ギリギリだよな。連射できそうだけど。


「うん、それよりも体が熱くなったんだけど」


 え?そういや俺もだな。

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