第6話 これからの事 スキルの検証.2

「気配察知と探知Ⅱと暗視のどの効果なのか、どんな感じか伝えてみてもいい?」


 いいよ。


 俺は服越しだと抱き合っても会話が届かないことを彼女に指摘されたので、今は手を繋いでいる。部屋の中だと、互いにズボンを脱ぐか、上着を脱ぐか、肌が触れ合う必要があるな。それでも意思疎通ができるだけで十分なのだけれど。


「暗視なんだけど、暗いところが明るく見えるスキル。気配察知は、15m範囲内の他人や魔獣の気配を感じるスキルみたい、今、周りにはいない。探知Ⅱは、船のソナーとか、飛行機のレーダーみたい。スキルレベルⅡは、100m範囲を調べられるんだって、これは便利かも。この補助魔法は、魔力が減ってないわね、これはいいわ、ああ、魔力消費20%減の減算スキルのお陰かも」


 へえ。確かに、100mの範囲が魔力消費なしで分かれば、相当すごいね。索敵した際に、敵と距離をとるにも時間的余裕ができる。


「うんうん、で、地図記憶Ⅱなのだけど、スキルとしては、自分が歩いた場所の記録がスキルレベルⅠ、スキルレベルⅡになると、自分が歩いていなくても、20キロ範囲までなら、表示してくれるみたいよ、ただ、遠くを調べると魔力が減ってきた。ちょっと休憩」


 無理しないで、俺もそのスキルがあるから、俺がやってみるよ。魔力は大丈夫?


「ふう。今、25/50、少しだるいかも」


 どれくらいの時間で回復するか、このまま使わずに調べておこう。


「うん」


 さて、俺は探知のスキルレベルがⅠなので、30m範囲だな。Ⅱだと100mか。スキルレベルは使えば上がるのか、重ねて取得しないと上がらないのか、知りたいね。

 平地では意味がないけど、森の中や、ダンジョンなら使えるのかな。あとは街の路地裏や宿屋の中とか。えっと、魔力が1減ったね。1以下は減らないとすると、アイリーミユと同じ、魔力消費20%オフの効果だね。


「へえ。そうなのね」


 うん。


 しかし、戦闘に使えるものが短剣だけだな。威圧スキルは、自分より低いレベルの対象にのみ有効。今は全く使えない。


 これでレベル5を目指すためには、地図記憶Ⅱと探知に頼って、最悪の場合に回復スキルだよね。使えば使うほどスキルレベルがあるか知りたいところだ。回復を目に使ってもいいかい。すぐには治せないと思うけれど、スキルレベルが上がるか毎日検証しておきたいんだ。


「いいわよ、私の目とあなたの首を一回ずつ毎日使ってから寝るようにしましょう」


 うん。


回復ヒール

回復ヒール


 俺は彼女の目と自分の喉元にヒールをかけた。光は放ったけれど、予想通り、発声することもできないし、彼女の瞳も開かない。使用頻度に依存する世界だと信じたい。


 唯一の希望なのだ。


 魔力は3ずつ消費した。43/50だ。


 次に、地図記憶Ⅱを使った。方角が分からないが、近場からゆっくりと範囲を時計回りに調べてみる。上が北なのかな。太陽の位置が背中側から感じる。


 どうやら村の南側にこの小屋があって、村は、北に300m、真ん中に道があって両側に小屋みたいな家が建っている。ざっと数えて、25軒ほどか。村人は、ほぼ全滅したのだろうな。東側は平原、西側は林があって森に続いている。道というか獣道がある。南は村を通る道がずっと続いている。もう少し範囲を広げてみるか。北の道をずっと北上。5キロ。何もない。南にも5キロ。何もない。そこで一度、魔力の減りを確認した。42/50。5キロ程度なら心配する魔力消費ではないな。


「そうなのね、私は一気に20キロ先から見たから減ったのね。」


 ああ、もう少し南北を見てみるよ。


「うん」


 北に5キロ先からずっと北上を続ける。7キロ、10キロを過ぎ、12キロ先に村がある。意識するとピン止めできた。さらに北に15キロ、20キロ。そこで地図の北限で途切れた。12キロ先の村以外は、何もない。洞窟っぽいものはあった。


 魔力は40/50、まだ大丈夫だ。


 今度は南側を見てみよう。5キロ、10キロ何もないな。15キロ先に、北の村よりも大きな村がある。1キロは宅地が続く。巾も1キロはあるな。町かな。その先は、20キロまで何もない。15キロ南の村をピン止めした。


 魔力の残量は38/50だ。


「小さな村は、ここと同じ状況かもしれないわよね、大きな村の方が安心かも」


 そうだよね。最後に、西側の森を少しだけ視てみるよ。


「うん」


 500mで林が始まって、3キロくらいの場所から森、さらに8キロくらいから森が深くなる。浅瀬に弱い魔獣がいればいいな。あるいは何もいなければ、林の中で寝てもいい。


「うん、それと魔獣はどっちから集団で来たか、予想できる?建物の壊れ方とか」


 えっとね、東の草原側は、全く痕跡は残っていないね。西側の家の方が損害は大きい。だとしたら、森の奥に入るのは危険かもしれない。浅瀬を少しずつ調査するのがいいかもしれない。然し浅瀬に魔獣がいるなら、もっとレベルは上がっているはずなんだよな。


 レベルの上限が分からないけれど15歳でレベル2って、産まれて15年は、ずっと平和だったってことだと思うんだ。


「うんうん、私もそれは思う、村人の生活痕跡というか、畑は近くに或る?畑があれば、経口摂取しているよね、食料を」


 ああ、そういうことか、いや、畑はないな。木の実とか食べているのかな。


「道路に轍はある?馬車が通った後とか、馬が歩いた跡」


 ちょっと見てみよう。一緒に歩いて行こう。50m西側だ。


「うん」


 この村の南側の入り口だ。壁も柵もない。ただ突然、小屋が立っていて、土の道路がある。道巾は、5mはあるな。結構広い。轍がある。馬車か荷車か。真ん中には蹄の跡というか、魔獣の足跡か。でかいな。少し南に歩いて見よう。うん、かなり深い轍があるので、人の往来は日常的ではないにしろ、全くないわけではなさそうだ。


「井戸か川は近くにないかな」


 ああ、生活用水ね、ちょっと待って、調べてみよう。東に400mのところに小川かな、小さいけれど流れているね。その間に、道らしきものも家らしきものもない。生活用水に毎日使っているとは思えないな。然し水なしでヒトが生きて行けるのか。それとも水のスキルとかがあるのかな。


 わからない。が、これ以上、この村で得られる情報は無さそうだ。この小屋の死体の行方くらいか。南の街に歩いてみるか。15キロだとどれくらいかかるかな。4時間もあれば着くか。さて、森に向かうか、街に向かうか。


「私は、森がいいと思うの」


 俺も同感だ。レベル2で街に行って何ができるかという話だ。この声、彼女の目の事、普通の仕事はできない。食事が必要ないなら、森で様子を見て、あわよくばレベル5を目指すべきだろう。


 俺は、自分の試していなかった【生存競争】のスキルを念じてみた。


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