第5話 これからの事 スキルの検証

「この子がどんな体型なのか、どんな顔なのか教えてくれる?」


 わかった。


 目の見えないアイリーミユに請われ、彼女の外観を上から下まで見つめる。そして彼女に触れ、説明を始めた。


 髪の色は、こげ茶色だな。ミルクチョコレートのような明るい茶色の少し深い色だ。そして長さは、ここだ。鎖骨のあたり。前髪はサイドと同じ長さで、こう分けてある、と俺は指でなぞる。背中側はこの辺りだ。と肩甲骨と髪の境界線を指で横になぞる。少しだけウェーブがかかっているので、真っすぐとかストレートと云うにはちょっと違うかな。


「うんうん、続けて」


 顔は、小顔だ。といって、彼女のオデコから頬、顎のラインに触れる。丸顔というよりは、顎のラインはシャープかな。鼻筋はしっかりと日本人よりは高いな。眉はこげ茶色で力強い。まつげも髪と同じ色だ。長いな。頬っぺたには少しだけソバカスがある。笑うと右側にえくぼが出るな。唇は何色というのだろう。この乳首と同じ色だ。ブラウン系というか、肌の色は小麦色だ。日本人よりは濃い。


「どれくらい濃いの?」


 ああ、待って、これは日焼けのせいか。体は白いな。顔と腕が日に焼けている。北欧というよりは東欧系の白さって感じなのかな。わかる?


「まあ、なんとなくね、いいわ、続けて」


 うん。体は痩せているな。身長は、このナイフを50㎝弱とすると、140㎝台後半くらいかな。体重はわからないけど、胸はこれくらいだ。前から、横から、後ろから触って持ち上げたり揉んだりする。80あるかないか、まあ、残念だがAとBの中間くらい、だな。


 ウエストも細い。あばらが見えているよ。もっと食べさせたい、と云うか、栄養ってどうするんだろうな。性交がエネルギー源と云ったって、1歳や5歳の子はできないだろう?


「そういわれてみれば、そうね」


 腰回りは、足が長いな。身長の割に。足は細い。折れそうだ。太ももなんて俺の腕くらいしかない。お尻には肉がついているけど、この腰骨だか恥骨だかが浮いているぞ。勿論、お腹は出ていない。真っ平だ。あとはここ。髪の毛と同じ色だが、気が薄い。忍んでいない。隠れていない。色は唇と同じ色だ。足のサイズは、小さいな。20前後だぞ、短剣の刃渡りの2/3くらいだ。


「わかった。なんだか、哀しくなるわ、ちゃんとこの子を抱いてくれる?」


 ああ。勿論、大丈夫だ。ただし、ベイルに身体的な欠陥がなければだが。この時点で下半身は何の反応も示さない。紳士であるならいいが、使えないのならば、致命的だ。


 彼女の顔は、とても綺麗な顔立ちだ。ただ痩せているだけだ。太る方法を二人で考えて試してみよう。


「服はどんな服があるの?」


 残念だが、選べるほどはない。着せながら説明する。


「うん」


 まず、下着だが、一番綺麗そうなのをはかせてみよう。片足を上げて。うん、もう一方も。はい。持ち上げるよ。


「なんだかズロースだっけ。可愛くない下着ね、しかもお尻が割れている。これトイレのための穴かしら」


 わからない。そして残念だが、ブラという物はない。肌着を着せる。スリップやシミーズほどは長くはない。肩ひもはあるけど、胸から腹巻っぽいな。上着は、なんだろう、修道服っぽいのだが上から被るのか。麻の色なのか、綿の色なのか、原色のままだ。肩から長袖の袖を通して、足元まであるな。スカートも肩掛けか。前側を紐で結ぶようだ。最後にベストのようなものだ。ああ、まさに中世だな。という服装だ。


「へえ、なんとなく着て、分かったわ」


 靴下はないぞ。裸足に、革素材のブーツみたいな靴だな。


「ありがとう。貴方も服を着て、どんな服か教えてね」


 ああ。俺は似たようなカボチャパンツ。茶色のズボン、上から巻頭着のような麻色の服に皮ベルトを巻頭着の上から締めるのか。ベストも羽織っておこう。革製かな、少し重い。ああ、アイリーミユにもベルトをしておこう。ここに短剣を挿して。わかる?


「ええ、ここね。わかるわ」


 彼女の右手を握って、ベルトの位置と短剣の位置を教えた。


 あとは、旅着なのか、フードのような帽子とは違うが、頭からかぶり、肩からお尻が隠れるくらいに羽織るものがある。季節感が分からないが、フードは深めで顔は隠せる。それを彼女の肩にかけ、頭にもかぶれるよと教える。

 前は紐でくくれる。それも紐の位置を彼女の背後から教えた。彼女自身の手で、俺の着た服をペタペタ触って確かめている。頭の先から、足の先まで。最後に俺の顔を両手で挟んだ。親指で唇、顎、鼻の下、鼻を探すように触っていく。


「よし、まだまだ成長の余地がありそうよ?」


 へえ。お互いに15歳だ。この世界では成人だと云うが。


 あとは、一番大きな布に包んで、生地と靴は、持てるだけ持っていこう。サイズの合わない服は町で打ってもいいし、仕立て直してもいい。


 小屋から一歩出ると日は高い。あちらで被爆したのが、朝、家を出て役所に並んでいた時間だ。同じとすれば昼前にもなっていないだろう。方角が分からないので、太陽を見ても時間がわからない。俺が付けていた時計もスマホもどちらもすでに無い。俺は彼女を膝に乗せ、互いに抱き合った形で座った。これからの事を打ち合わせよう。


「うん」


 まずは、魔獣と強盗団について考えよう。この村には、外壁も柵もない。もともと、治安が良かったのか、魔獣が来なかったのかもしれない。そう考えると、残りの村人が死体を集められるほど時間的余裕があったのか。一度襲われた村は、奪うものがないなら、すぐには来ないか。いかし、40人以上が死ぬほどの規模の魔獣や強盗団。今、かき集めたスキルをこの人数で戦っても、これだけの死人が出ている。レベルを上げることを優先すべきか。


「レベルが2だものね、二人とも」


 うん。魔獣や盗賊についても調べたいが、安住の地も見つけたい。移動するにもヒントは、この補助魔法の【地図記憶Ⅱ】。誰かが、村や街に行った地図がわかるのだろうか。優先順位を決めたいな。


「ええ、ゴールは安住の地でいいと思うの。そこに辿り着くために戦うか、逃げるかだよね」


 ああ、そうだ。しかも一度も失敗は許されないかもしれない。間違えば死ぬ。


「だよねー。二人で死ぬならまだしも、あなただけ死ぬとか絶対に止めてよ」


 解っているよ。必要なことを互いに言い合ってみよう。


「うん、一つずつね」


 ああ。

 この村と一番近い村か街の情報を探す。


「食べられるものがあるか見つける、食事が必要かどうかね」


 魔獣の分布とレベルを調べる。強盗団は調べようがない。遭遇しないことを祈ろう。


「ええ、自分たちの実力を知っておくことも大切じゃない」


 うん。使っていけば、スキルのレベルが上がるのか、なるべく短剣で敵を倒したいが、二人に経験値がどうやれば入るのか。女神様は魔獣を倒すと経験値が入ってレベルが上がると説明していた。


「パーティ登録みたいなものはないのかな」


 ステータスが村人だからな。冒険者とか探索者とか、ハンターとかそういうのがあるのかな。一番弱い魔獣のエリアが分かればいいが。二人がレベル2ということは、一度は魔獣を倒していると思うんだよ。弱い奴。


「うんうん、それは地図記憶Ⅱで、あとで確かめてみよう」


 おう。あとは攻撃魔法と防御魔法が未開放。生活魔法が使えたから、そのうち使えると思うのだけど、条件はわかるかな。ステータスで見てみようか。


「うん」


 俺はステータスを脳内に展開して、攻撃魔法:ランス系(未開放)の未開放部分に意識を注力した。解放条件が開いた。


 ※解放条件、レベル5で使用可能。


 同じく、防御魔法:シールド系(未開放)の未開放部分も見た。


 ※解放条件、レベル5で使用可能。


 回復魔法があるから、即死しなければ、あるいは、スキルレベルが低いので、骨折とかしなければ何とかなるかな。今のところ使えそうなスキルをお互いに診ておこうか。


「うん、じゃあ、私から、指先から着火するから見てどうなったか教えて」


 うん。


着火イグナイトⅡ】


 青い火だ。高温で蝋燭のようだ。火が消えていない。


「生活魔法は、魔力が1しか減らないみたい。耐性魔法って自動的に効果が続くみたいよ」


 へえ。


「補助魔法、暗視ってくらいところが見えるのよね」


 うん。


「なんとなく、気配察知と探知Ⅱと暗視のどの効果なのか、この小屋の感じを伝えてみてもいい?」

 いいよ、色々と検証しよう。


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