第4話 女神の短剣 スキル鑑定解放
俺が背中越しに抱いたアイリーミユが云う。
「服は後、スキル取得を先に、この方が、生存確率が高まると思わない?」
その通りだ。君が正しい。
俺もそう思っていたが、裸のアイリーミユをそのままにしておくのも俺の理性の都合と彼女の羞恥心を天秤にかけ、そう提案したのだ。
「その優しさは嬉しいけれど、命を守ることを優先してね」
ああ。俺の肝にメモをしておく。
俺は、抱きしめた彼女から手を放し、その場に座らせた。山から取り出した死体を一つずつ彼女の目の前に置いていく。彼女がスキルの鑑定結果のみを告げる、ということにした。
一つ目。スキル:裁縫
獲れるのなら、全部獲ろう。
そう決めて二人で、短剣で刺す。スキルが入手できると、体がわずかに輝く。俺が刺し、彼女が刺した。差す順番は、無関係のようだ。裁縫のスキルは彼女が手に入れた。
二つ目。スキル;隠密
三つ目。スキル:探知
四つ目。スキル;ドライ
ここで、アイリーミユが俺に声をかけた。
「ねえ、鑑定のたびに、魔力を消費するみたい。死体全部を鑑定できるかしら」
ああ、30体以上あるな。それなら、鑑定なしでひたすら刺していかないか?一通り終わったら、二人を鑑定する。魔力を温存しておいた方がいいと思うぞ。
「それは、いい考えね」
ああ。せっかくスキルを手に入れても、利用する魔力が残っていないのでは本末転倒だ。
俺は、死体を刺しやすいように並び替えて、彼女の右手を持って二人で刺し続けた。特に深くグサリと刺さなくても良いようだ。
スキルを得られると、短剣と体が光る。
しかも同じスキルがあるかどうかは、今はわからないが、結構な頻度で、二人のうちどちらかがスキルを得られている。しかも時々、二人同時に光るときもある。さらに、よくわからないが、通常よりも眩しく光るときもある。スキルが重なったのか、レアスキルなのか、あとで鑑定して貰おう。
結局、魔獣か強盗団の手によるものかは不明だが、死体は42体あった。勿論、性別と年齢は千差万別のため、二人が着用可能な服は5着程度だった。ただし、血と裂け目、破れはどの服にもあり、洗濯と修繕は是非済ませたい。
「着られない服を使って、裁縫スキルでカバンを作りましょうか?」
針と糸はあるのか?
「あら、ナイフの鞘にあったはずよ、鑑定で調べたわ」
本当だ、これってランボーナイフみたいだな。
「ランボーって、あのシルベスタースタローンの映画の?」
うん。良く知っているな。
「ええ、亡くなったけれど、パパが大ファンだったのよ」
へえ。短剣の片側が刃で、もう片側のギザギザがノコギリっぽくなっている。刃渡り30cmほどで、握り手を含めると45㎝前後だ。鞘にはポケットがあり、その中に、釣り針、裁縫針、ピンセット、糸が入っていた。
それよりも。と思い、座ったままの彼女を再び背後から抱きしめた。
「それよりも?」
この小屋に、死体を集め、運んだのは誰だろう。強盗団が丁寧に死体を積み上げたりしないよな。
「そうね、村の生き残りがいるのかしら」
後で、燃やすか、あるいは埋葬するために?あり得るよな。
「死体を大分動かして、刺してしまったわね」
そうだけど、元に戻すのは勘弁してくれ。しかも、服をはぎ取った後だ。死体の中で寝るわけにもいかないな。村の中で安全な場所を探してみるか。それに、村人なら、ばったり出くわしても、元村人の俺たちの顔を視れば、襲ってはこないだろう。ただし、村人への説明ができないが。
「ええ、ざっと見た感じの村の様子をあとで教えてくれる?」
分かった。その前に、服を何か羽織らなくていいか?
「ん~どうしよう、私は裸でもいいんだけど、誰かに会うと面倒よね。貴方は一人で話せないから。二人で手をつないでいると、どういう関係か問われて、返事に矛盾が出ても困るわよね」
そうだな、でも、俺たちは離れない方がいい。村から離れた方がいいな。
「あなたの泡のスキルで石鹸とか、シャンプーとか出せないのかしら、裸でも体が臭うわ。それとも先ほど得たスキルの中に何か使えるものはないかな」
先に、お互いのスキルを確認してから動こうか。反撃できるか、逃走するかの判断にもなる。
「そうね、ねえ、鑑定解放するから、正面から抱きしめてくれる?」
わかった。
俺は彼女の手を取り、二人で立ち上がって正面から抱きしめあい、互いの胸を当て合った。
▽ステータス
ベルンハルト:15歳 ヒト族 成人男性 村人
レベル2
ベルンスキル:【泡類Ⅰ種】
ハルトスキル:【生存競争】
(NEW)-----
武器スキル:【女神の短剣】使用回数42
生活魔法:ドライ、ウォッシュ、クリーン、ライト
耐性魔法:毒、酸、寒
攻撃魔法:ランス系(未開放)
防御魔法:シールド系(未開放)
補助魔法:威圧、暗視、回復、探知、地図記憶Ⅱ
加算スキル:攻撃15%、防御15%、迅速15%
減算スキル:魔力消費20%
HP:100
魔力:50 (消費1/5減)
攻撃:11.5(+1.5)
防御:11.5(+1.5)
迅速:11.5(+1.5)
幸運:20
▽ステータス
アイリーミユ:15歳 ヒト族 成人女性 村人
レベル2
アイリースキル:【探知Ⅱ】(+1)
ミユスキル:【鑑定】
(NEW)-----
武器スキル:【女神の短剣】使用回数42
生活魔法:裁縫Ⅱ、計算Ⅲ、看破、着火Ⅱ、浄化Ⅱ
耐性魔法:毒、酸、寒、熱
攻撃魔法:バレット系(未開放)
防御魔法:ガード系(未開放)
補助魔法:暗視、気配察知、自己回復、地図記憶Ⅱ
加算スキル:攻撃15%、防御15%、迅速15%
減算スキル:魔力消費20%
HP:100
魔力:36/50 (消費1/5減)
攻撃:11.5(+1.5)
防御:11.5(+1.5)
迅速:11.5(+1.5)
幸運:20
俺は、彼女を抱く力を強めた。
「あなたには回復、私には自己回復がある、いつか、あなたの声、私の目が治るかもしれない」
ああ。俺もそれを今、思っていたところだ。生きる希望が、微かだが湧いてきたな。
「私は微かどころか、凄く沸いたわよ」
ははは、生活魔法というのを、調べて使ってみよう。
「ええ、鑑定してみるわ、えっと、ステータスのところで、自分の見たいスキルをクリックするイメージで見てみて、スキルの説明があるわ」
わかった。やってみる。
生活魔法:スキルレベルは1~3。1は初級、2は中級、3は上級。
ドライ:乾燥させる。
ウォッシュ:洗う。
クリーン:汚れを取る
ライト:明かりをつける。
【クリーン】
俺はクリーンを使ってみた。ほとんどの汚れは落ちたが、血痕は落ちなかった。スキルレベルが低いのが落ちない理由かもしれない。
【クリーン】
俺は服の次に、自分と彼女にもクリーンで汚れを落した。髪や汗がスッキリした気分になった。風呂上がりとは言えないが、水で顔や髪を洗ったくらいは綺麗になった気がする。
「ありがとう、伝わったわ、今度は私の生活魔法を調べて教えるね」
ああ。頼む。
生活魔法:スキルレベルは1~3。1は初級、2は中級、3は上級。
裁縫Ⅱ:布からあらゆる服が作れる。
計算Ⅲ:どんな数字の組み合わせでも瞬時に解答できる。
看破:正体を見破る。
着火Ⅱ:高温、耐風で点火可能。蝋燭のように維持できる。
浄化Ⅱ:消毒、解毒、除菌、消臭、避妊に効果100%
【浄化Ⅱ】
「死体って妊娠しないわよね」
たぶん。だが、今の浄化で効果100%だ。不快な臭いは、二人からもこの小屋からも消えた。凄いな、スキルレベルⅡの効果は。いいや、アイリーミユが凄いのか。服を着ようか。
「ええ、その前に、じっくり見てもいいわよ、この子がどんな体型なのか、どんな顔なのか教えてくれる?自分で自分が見えないのは不安だわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます