第5話 緑の王国
炉、暖炉、家庭、家族、国家の正しい秩序を司る処女の女神であるヘスティア。
眼鏡を掛け、長い白髪の髪をアップしたこの老婆こそヘスティア様だったのか、とクレーネーは思い出す。
ゼウス、ポセイドン、ハデスも年老いているが、彼女も年老いていた。
「クレーネー、待ってました。私はヘスティア」
ヘスティアは訪ねてきたクレーネーの手を優しく握る。
「オリンポスの神々の中でも真面目なお方と聞いてます」
「ありがとう、クレーネー。嬉しいです」
(クレーネー、ヘスティアの様子はどうだ?)
神々の王であるゼウスが若い女神クレーネーに訊く。
(お元気でした。ヘスティア様を見習って私も立派な女神になりたいです)
(余もポセイドンもハデスもヘスティアも老いてるがそれなりに仕事はしてる。見た目が一番だとは限らんことだ)
(ゼウス兄様、ご忠告ありがとうございます)
ハデスは白髪をオールバックにしながらヘスティアに訊く。
「ヘスティア、余になにか用か?」
「クレーネーの付き添い巫女であるモニカの転生先をお聞きしたいのですが………」
ヘスティアの言葉にハデスが黙り込む。
アムブロシアー。ギリシア神話における神々の食べ物。語源的には〈不死〉を意味する。普通,飲み物はネクタルnektarといって区別されるが,両者が無差別に扱われたり,アンブロシアが飲み物と見なされる場合もある。
「冥界の秩序を乱すのか?」
ハデスの冷淡な声でヘスティアに尋ねる。
「違います。クレーネーにとってモニカという少女は大切な存在です。私達神々と違い、人間は有限な時間しか生きれない」
「知ってる。だか、アスクレピオスを見よ」
「冥界の王であるハデス様が本当に慈悲があるならどうかクレーネー様の願いをきいてください」
ハデスはため息をつく。愛する妹の願いなら仕方ない。
「分かった。余にもできる限りのことはやる。クレーネーの願いをきいてやる」
ああ。願いが叶うかもしれないわ、クレーネー。とヘスティアは喜ぶ。
転生巫女は語る カナンc @kananc58
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