正義の味方になれなかった平凡な俺へ

「 背景、正義の味方に憧れる凡人へ


 いきなりこんな手紙を渡されても困るだろうが、単刀直入に言う。お前は必ず死ぬ。

 嘘だと思ってもらっても構わないが、一応俺が本物だって証拠を示しておく。

 お前が一目惚れした女の子は、必ず幼馴染みのイケメンな天才に惚れるぞ。前に聞いたら絶対に俺の初恋を邪魔してやるんだって言ってたからな。

 いいぞ叩きにいって。俺が許す。


 まぁ、本題に入ろう。

 俺は必ず死ぬが、同封のデータで再構成することができる。記憶もある程度戻るそうだ。

 あいつは俺が一度死ぬなんて嫌だって駄々をこねるだろうが、再構築機構は本気になれば作れるそうだから、やる気にさせろ。

 生まれ変わったらなんでもさせてやるって言えばイチコロだぞ。多少しばらく椅子に座るのがきついだろうが、犬にでも噛まれたと思って我慢してくれ。

 それともうひとつ頼みというのは、お前とあいつの思い出を手紙に書き残してくれ。

 同じ俺たちとは言え、分かたれた世界ではそれぞれ微妙に異なるからな。

 大抵あいつのやらかしの尻拭いをしている記憶だろうが、書き残しておけば新しい俺とやらはそれを読んで、その世界のあいつと過ごした俺になるだろう。

 多少記憶からこぼれて落ちていても気にするな。人間なんざ、そもそもすべてを覚えているわけではないからな。

 その世界のお前の思い出が引き継がれていることが、あいつにとっての救いとなる。


 願い事はひとつ。

 頼む。お前の世界のあいつを救ってくれ。

 その世界のあいつを救えるのは、お前しかいない。

 俺は俺の世界のあいつを救うから、そちらの世界は頼んだぞ。


 あいつの幼馴染みの、凡人な俺より  」



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