破天荒な天才2


 そいつの狂った才能は、まさに鬼才とも思えるようなものだった。


 6才にして作った空間転移装置は、時空の概念を超越し、世界機構から保護隔離をされそうになったし。

 まぁ、幼なじみの俺と離れるのが嫌だって子ども過ぎる癇癪で、俺の家族ごと凄まじいセキュリティが完備されたマンションに引っ越す事になったんだが。


 8才にして作った次世代医療装置は、どんな病気も治してしまう新技術として、その技術を得ようと世界戦争が起こってしまったし。


 やることなすこと破天荒なのに、世界平和を掲げているのか、生み出す技術はどれも世界に役立つものばかりだった。

 聞けばいつも、『君が言ったから!』なんて不可解な事をニコニコと告げてくるが、まぁ、その……破天荒な才能を正しいことに使っているのなら、幼なじみとしては鼻高々だ。


 毎年毎月毎日のようにナノマシンを使って検査されるのは、『君のためだから!』なんて無邪気に人体実験されているようでモゾモゾとしてしまったが、あいつはまぁ、やることなすこと常識外の事だけど、何故だか幼なじみの俺に対しては、絶対的な味方でいてくれた。

 何故だ。他にもあいつの回りにいたはずなのに。何故だかあいつは俺を選んでくれた。

 まぁ、ぶっ飛んだ事をしでかしても、人様に迷惑かけそうになったら叩いて軌道修正しているのが良かったのか? 

 わからないけど、たぶんそんな理由だろう。

 

 まぁ、そんな頻繁に検査をするあいつのおかげで、進行性の病気なんてものが俺の身体から見つかって、直ぐに治されてしまったんだから、命の恩人ってやつだろう。

『良かった、良かった……君のいない世界なんて僕は耐えられないよ』

 実の家族以上に泣きじゃくる命の恩人様をよしよしと撫でる。いや、お前泣きすぎだって。


 でもさ、誰が想像しただろう。

 一緒に病院を出たところで、あいつの天才的な頭脳を狙ったテロリストたちに襲撃されるなんてさ。

 こいつを、世界を救えるこいつを守らないと……なんて抵抗した俺は下半身とおさらばすることになっちゃうなんてさ。

 俺の血で染まるあいつは必死に血を止めようとするけれど、病気は治せても血が流れすぎていてもう助からないようだ。


「お前は天才的だから。俺の分まで生きてくれ」


 そう呟くと俺は事切れた。




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